BLack†NOBLE

溺愛


溺愛in Japan


───「やっぱり、うちのバスルームが一番ね! 柏原」


 ひゃっほう、と変な叫び声が聞こえて、曇るバスルームの扉一枚向こう側で茉莉果お嬢様はバスタイムを楽しまれている。


 パシャと水を弾く音がして、バスルームにはローズの香りが甘くたちこめていることだろう。




――お嬢様、ご一緒してもよろしいですか?



 そう聞くべきか……

 それとも、ここは婚約者として強気にバスルームに乱入すべきか……


 俺は、薄い曇りガラス一枚隔てた外側で、さっきからずっと頭を悩ませていた。


 悲鳴をあげられて拒まれたら、再起不能になるかもしれない。折角、戻ることができた彼女との二人の生活。ここは慎重に……いや、でも今すぐ抱きしめたい。

 でも…………


 念願叶って婚約者として帰国した俺たちだが、俺の苦悩は尽きることがないようだ。



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