BLack†NOBLE
『ク……クロード様は、アナタが考えているような人じゃない』



 スリップを引き裂く。

『お前に蔵人の何がわかるんだ! 知ったような口をきくな』


『……ぁっ!』と声にならない叫び声。

 あらわれた素肌は、鞭の跡も縄の跡もない綺麗な体だった。


 俺が掴んだ部分だけが、赤く痣になっている。




『大丈夫……あなたの大切な彼女が、乱暴されるような事はありません』



 悔しさと、心を見透かされた居心地の悪さから、俺はニナから目線を反らす。

 そうやって自分の情けない顔を見られないようにした。


『彼女は、一人では何もできないような人だ』


 情けない……
 こんな若い女に、頼るしか選択肢がない。




「わかりマシタ……私、話相手になりマス」


「日本語が話せるのか?」


 だけど、思いがけずコイツは使えそうだ。

 かなりカタコトの日本語だが、発音はしっかりしている。


『クロード様が教えてくださりました』

 蔵人が……


『お前が責任持って彼女の面倒をみろ』

 ニナは大きく頷く。


『俺が必ず迎えに行くと伝えてくれるか?』


 彼女は待っている。


『伝えます』


『乱暴な真似してすまなかった……』


 ニナの肩に額を置いて抱きしめる。震える指先で俺の頭を撫でてくれていた。




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