BLack†NOBLE


────イタリアの有名デザイナー、ジョルジオ・グッチの服。昔から蔵人のお気に入りだ。


 光沢のある黒いシャツに袖を通す。
 俺のシャツは、彼の部下にタガーナイフで引き裂かれてしまったのだから仕方がない。


 仕返しに、ニナの服を引き裂いたからおあいこだろ。

 別に、本気で犯そうとしたわけじゃないが……少し可哀想なことをした。

 守備よくやってくれるだろうか。



「女なら、後でいくらでも用意してやる。飢えてるのか?」

 蔵人は出入り口で腕を組みながら、そう言った。


 ニナの事を咎めてるんだろう。



 それを無視して、プラチナにダイヤが埋め込まれたカフスで袖をまとめて、嫌味なほど磨かれた革靴を履く。

 Gのマークが整列した柄物のタイに、やはりダイヤのピンを打つ。



「悪趣味だな」と悪態をつくと「そうか? よく似合っているぞ」と笑う。



 別に洋服のことを、言ったわけじゃない……人の着替えを覗く行為が悪趣味だ。

 まあ、わざと受け答えているんだろう。相手にするだけ、無駄だ。


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