BLack†NOBLE
護衛が慎重に、エントランス扉を開く。
大理石、綺麗に鉢植えされた観葉植物。そしてトレビの泉のレプリカのような小さな泉が、小さな水音を響かせている。
ガーデンアーチには、薔薇が蔦を這わせて大輪の花を咲かせている。深紅の見事な薔薇だ。
毒々しさが美しい。
ロータリーや車庫には、ランボルギーニとマセラティが数台ずつ並べられていた。一台あたり二千万以上の値が張る高級車だ。
外は、暗く。車の向こうに、黒い鉄柵が見える。
建物は、コの字型に造られている。 三階建てで、オレンジ色の屋根。部屋数は相当あるな。小さなホテルか、アパルトメントのようにも見える広大な屋敷だ。
灯りのついた窓辺に、お嬢様の影がないかと必死に探していると…… レイジに強く睨まれた。
『瑠威様、クロード様がお待ちでございます。あまり身勝手で軽率な行動は控えてください』
控えないと、何をされても文句は言えないぞ……と、その強い睨みが語る。