BLack†NOBLE



「いい曲だ」


「お前に何がわかる」



「こう見えてクラシックが好きだ。発売されている紫音夫妻のCDは全て持っている」


 カンパリを口に含み、聴き入るように瞳を閉じた蔵人。周りの使用人たちは、蔵人の反応をみて安堵の顔を見せる。

 重厚なガラスの向こうで揺れる海草と、全く異なるリズムが気持ち悪い。酔いそうだ。



「随分前から、俺が紫音夫妻の屋敷にいる事を……お前は知っていたのか?」


「勿論」



 イタリアに入国してから蔵人が現れるまでに二日とかかっていない。 ハイヤーは、マフィアに通ずる者が多いので利用を控えていた。

 『紫音』の名前でチェックインしたホテルなどに、内通者がいたという可能性があるな。



 





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