BLack†NOBLE
メルフィスの一味がもしかして俺を狙ってくるかもしれないと用心していた。それでも、紫音の名前ならば絶対ばれないと思った。
正直、蔵人がメルフィスの名を語っているのはショックだ。コイツも、俺と同じようにメルフィスを憎んでいると思っていた。勝手な思いすごしだったわけだ。
このクラブ、あの屋敷、これだけの数の使用人。
これは、蔵人がメルフィスを殺したという真実を証明している。コイツは、イタリアマフィアの世界の頂点にいる。間違いないだろう。
メルフィスは、イタリアでは企業家としても有名だった。色々な場所に張り巡らされたネットワークに精通できるマフィアなど、そう多くはいない。
もし俺が日本に渡り紫音邸で執事として仕えていた事実を把握していたのなら、この地に俺がやってくるのを息を潜めて待っていた……ということになる。