BLack†NOBLE
そうなると……俺はどうすれば、彼女を取り戻せるのだろう?
「瑠威、少しは料理に手をつけたらどうだ? まさかイタリア料理が口に合わないとか言わないだろうな」
ククッと笑い、トスカーナ産のキャンティのワインをあける蔵人。さっきから九割の会話が、一方通行だ。
「屋敷にいる茉莉果も、この地方の味付けに難色を示さなかった。瑠威が作る料理は、母国の味に従っていたんだろう」
「母国?」
『そうだろ? 瑠威は国籍も産まれも、イタリアだ。途中、両親の赴任でこの地を離れたこともあったが……一番長く住んだのは、此処だ。そして、これからも瑠威は此処に住むんだろ?』
蔵人のイタリア語は、美しい。それに比べて日本語は、独自のセンテンスがあり少し歪んでいる。
「俺は、彼女と日本に帰る」
『瑠威の帰る場所は、此処だ』
蔵人は皮靴で地面を蹴る。激しい睨み合い────
『一緒に暮らそう』