BLack†NOBLE


 俺と同じ形をした瞳が、鋭く光る。



 この睨みだけで怯えて泣き出す奴もいるかもしれない。 整いすぎていて恐ろしい、恐ろしいほど整っている。

 その黒い瞳に、黒い髪も、俺たちに同じ血が流れている証拠。




「瑠威……悪いようにはしない。ただ、あの女とは別れろ。お前には相応しくない」



「それが一番最悪だ」



 テーブルには、トマトの良い香りを漂わせたペスカトーレが運ばれてきた。

 イタリア料理は、基本的に前菜のあとはプリモ・ピアット(主菜)としてパスタやリゾットが出される。

 次は、魚料理か肉料理のセコンド・ピアット。それに合わせて用意される野菜やサラダがコントルノ。

 それからドルチェとカフェで料理は終わる。



『食事にしよう。ゆっくり考えろ。お前には、こういう生活が似合うよ』


『こんな深いソファーで、コース料理を食べるなんて邪道だ』


 周りで蔵人の顔色を伺っていた奴等が俺の発したイタリア語で、また青ざめた。「余計な事言いやがって……」と敵意の視線すら感じる。

 用意されていたシルバー製のナイフとフォークを取ると、蔵人はまたククッという笑い声をあげる。



『育ちは同じだろ。生意気な事言うな』


 周囲から再び安堵のため息が聞こえた。

 同じかもしれないが、離れていた時間の溝は一生塞がらない。


 誰のせいで両親が死んだと思っている。それなのに葬儀にも顔を出さなかった……



 俺は兄が憎くてたまらない。






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