BLack†NOBLE


『クロード様、アリシア様がいらっしゃいましたが……いかがいたしましょう?』


 レイジが蔵人に来客を告げた。俺には関係ない。

 目の前の魚料理、アクアパッツァを食べた夜を思い出す。 彼女は、何か勘違いした言い方をしていた。

 蔵人と食べる料理より、彼女と一緒に食べる料理の方が数百倍美味しく感じる。


 あの夜、婚約指輪を渡せなかったのは、こうなることへの予兆だったのか?

 眠る彼女の指にリングをはめて、無理矢理にでも日本に帰ればよかった。


『通せ』


 彼女は今何をしているのだろう……

 一人で寂しいディナータイムを過ごしているのか……


 乱暴なことはされていないか……



 頼みの綱は、ニナだけだ。 こんな事なら、もう少しお嬢様の好みや対処法を詳しく教えてくればよかったのかもしれない。




『クロードッ!!!!』



 ラウンジの扉が乱暴に開かれ、深紅のドレスを着たイタリア女が飛び込んできた。

 どこかで見たことのある顔だ。



 ブロンドの髪に、こぼれ落ちそうな程に大きな瞳はエメラルド。

 誰もが息を飲む程の絶世の美人といっていいだろう。




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