BLack†NOBLE


『その女が死んでも、俺は抱かない。本物の快楽は苦痛の中になんて、あるわけないだろう』


 蔵人の冷めた目が、さらに色を無くした。


『つまらない男になったな……瑠威。まさか愛情の中に快楽を見いだせるとか言わないよな?』


『そのまさかだ』



 彼女を愛して初めて知った快楽。彼女の肌を感じて、その温もりを感じて交わる喜び……俺はもう他の女になんて興味ない。



 
『……ゲホッ!!』


 急に解放されたアリシアは、激しく咳き込みながら床に崩れ落ちた。

 首を締め、意識が途切れる寸前で解放する。 女は、パニックと苦しさから一種のトランス状態に陥る。


『クロード様、こいつでよろしいですか?』


 レイジが連れてきた男は、若くて頭が悪そうな男だ。


『嗚呼、ちょうどいい』


 蔵人が優しく……まるで善人のように微笑む。


『おまえ、その女を犯せ』


 連れてこられた男は、『えっ? いいんっすか?』 と間抜けな返事をしただけだ。


『いいよ。好きなだけヤれよ』


 
 この鬼畜な野郎。せっかく手に入れた彼女との平穏な日々が夢のようだ。



『嫌よ! やめてよ!』


 瞳を伏せて、もう一度ロマネを口に含んだ。苦虫を噛み潰したような味がした。



 背中にライフルの銃口が押し付けられたままだ。





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