BLack†NOBLE
蔵人は、玩具に飽きた子供のように、ふてくされた顔をして、ワイングラスを傾ける。
「瑠威は変わったな」
「おまえは、何も変わらないな。こんな事、今すぐやめたほうがいい。頭がいいんだから、普通の生活だってできるだろ? 何をやって……」
「もう、戻れない。自分で選んだ道だ」
蔵人は細めた瞳で俺を視界の隅におさめると、白木の箱に揃えられた煙草を手にとる。
勿体ぶるようにソレを指先で回しながら口に挟む。
傍らにいた女が火をつけると、ゆっくりと味わうように肺に吸い込む。そして女を抱き寄せる。女は蔵人の肩に頭を預けた。
日本で一般的に売られている紙に煙草の香りを染み込ませた安価のものとは異なる、本物の葉が焼ける香りがする。
「茉莉果を返してくれ」
「ダメだ」
「どうしてだよ!」
蔵人は「ふぅ」と大きく煙を吐き出す。
肝心なことには、答えをくれない兄に腹がたつ。
『何を躊躇ってるんだ、はやく犯せ!』
若い男は、居心地悪そうな顔をした。
蔵人が右手を懐に突っ込み、取り出した黒い物体を見て慌ててアリシアに覆い被さった。
『俺が「いい」って言うまで、動きを止めるな』
『だって、彼女、アッ……アリシア・キースだろ……?』
『だから何だよ? ラッキーだろ? 有名女優とヤったと友達に自慢でもすればいい』