BLack†NOBLE
『弱点……弱点……クロードって、どんなプレイもそつなくこなすから……弱点探すの難しいな……』
『プレイの話をしてるわけじゃない、おまえ元妻だろ? 一緒に暮らしていて、何かないのか!?』
腕に絡み付いたアリシアに怒鳴り声をあげる。煩い音楽のおかげで目立ちはしないが、それでも数人が此方を見てくる。
『一緒に住んでなかったんだもん……』
チッ…… 使えない馬鹿女だ。
ボーイが運んでいた、ウェットタオルを一つ受け取るとアリシアに手渡した。
『とりあえず、その汚いツラどうにかしろよ』
凌辱されて化粧の落ちた顔は、見るも無惨だ。
『汚い……って、ヒドいっ! 私、女優よ!』
言い合いながら出口に向かう足は止めない。蔵人の気が変わらないうちに、はやくここから出なくては……
ゴシゴシと乱暴に顔を拭いたアリシアは、それでも俺の腕を離さない。
さっきから、多くの視線を感じる……
多分、俺を見ているわけじゃなくアリシアを見ているんだ。
有名女優だからな……
彼女が主演女優賞を逃した際に世界中から審査のやり直しを求める声明が発表されていた。
そんな経緯があるから、日本にいた俺も彼女を見ただけで「アリシア・キース」だと判断できた。