解ける螺旋
自分の目を手で覆った。
とても顔を上げていられない。
真っ直ぐに奈月を見る事すら出来ない。


だけど。


「ごめん」


掠れた声が言葉を綴った。
結城のプライドを守る為に、結城には言えなかった謝罪の言葉。
罪を共有させてしまった奈月にだって言える言葉じゃない。
だけど言わずにはいられなかった。


「俺が、君たちの幸せを……」


奈月が小さく首を振った。そして俺の言葉を指で止める。


「この未来で私達が何を願うかは、愁夜さんでも知らないはずです」


奈月が言おうとしている事はわかる。
この先の未来は俺にとっても未知のもの。
今の二人は、俺だけが知る他の世界の二人とは別の運命を辿った。


この先どんな世界が創り上げられるのか、それは俺にもわからない。


「愁夜さんは真美さんが幸せに生きる未来の為に、この世界を創り上げた。
だけどね、幸せって本当は自分の手で掴むものだと思うの。
その為に行動する事を誰にも文句は言わせない。
何かを犠牲にする事だって避けられない。
だって全ての人間の願いを叶えるなんて、神様にだって出来ない事なんだから。
だから自分の幸せを求めて行動する事は、責められる様な行動じゃない。
……私だって、健太郎がどんな想いで真美さんの傍にいたかを考えなかった訳じゃない。
だけど健太郎が幸せだって言うから、私もその言葉を信じた。
信じれば健太郎を救えるって思いたかったから」
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