解ける螺旋
26歳になった真美を初めて見たこの未来で、28歳になった奈月を初めて見た。
こうなる未来を想像した事は今までなかったけれど。


「……輪廻の環だね。
俺は結城と君の幸せを願って。
結城は君の幸せを願って。
君は俺に幸せにしてくれって言う。
じゃあ俺は結城の幸せの為に、君を幸せにしなきゃいけないって事になる」

「……だから」


奈月が半分いじけて俺を見つめる。
運命共同体みたいだな、と少しだけ考えた。
だけど、俺が今まで砕き続けて来た奈月の幸せを、俺の手で彼女に返せるのなら。


そろそろここで降参しておこう。


そうじゃないと俺は、本気で奈月を逃がしてしまうかもしれない。
諦めたフリをして、俺は奈月を抱き寄せた。


「まあ確かに。
悔しいけど今までの俺が創り上げた世界は、いつも君が中心だった」

「……深く考えると、結構際どい言葉なんじゃないかと思うんですけど」


今更照れ臭いのか、奈月が視線を泳がせる。
それを見ながら、俺は奈月の肩に額を乗せた。


――嘘ではなく。


俺の世界はいつも奈月を中心にして回っていた。


これまでそこに愛情という感情はなかったとしても
終着点を迎えたこの世界で、俺は奈月を愛してしまった。


結局。
この世界で俺の分が悪いのは、もう諦めざるを得ないのか知れない。
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