解ける螺旋
だからだと思う。
あれから健太郎はずっと私を守ってくれた。
だからちょっと過干渉じゃないかと思う様な時も、健太郎の気持ちがわかるから文句を言えない。


『あの人』のおかげで私は助かったけれど、犯人が捕まっていない以上、助けられなかったら私がどうなっていたかわからない。


いろんな意味であの事件は私の周囲を大きく変えた。
健太郎も、私自身も、そして私の両親も。
だからこそこのパーティーはいつも以上に気が重い。


私の両親が交わした『約束』
それがなんなのか、誘拐事件と何か関係があるのか、理解出来ない事ばかりだから。


鏡の中の自分を見つめてもう一度溜め息をついた時、ドアがノックされた。
思い耽っていた私は、ハッとして顔を上げた。


「奈月。準備出来たか? ……そろそろ行くよ」


健太郎の声。
私は慌てて立ち上がった。


「ごめん。今行く」


そう答えると、鏡から目を背けて立ち上がった。
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