解ける螺旋



実験の為のコードを配線しながら、私はなんとなく溜め息をついた。


大学生の研究論文の為の、プラズマ現象を発生させる実験。
放電を起こす危険な実験。
屋外だし、割と肉体労働な準備にちょっと肩を叩きながら、教授と打ち合わせをしている樫本先生に目を遣った。


熱心に打ち合わせをする二人と向かい合っているのは、この実験の発案者の女子学生二人。
結構神経を張り巡らせる実験になるのに、二人はどこかポーッとして、樫本先生を見つめている。


大多数のゼミの学生達は、この実験で初めて樫本先生に会う人ばかりだけど、女子学生の間には何やらいつもと違う微妙な空気が漂っている。
そしてその視線の先にいるのが樫本先生。


――気持ちはわかるけどね。


私は無理矢理視界から樫本先生の姿を排除して、コードの配線に専念する。


この実験の準備に入る前にほぼ全員の学生が集まった研究室で、樫本先生が学生に紹介された。
その時の学生の反応がものすごく気になる。
釘付け、というのはこういう時に使う言葉だろうって納得してしまう位、みんな樫本先生の姿に見惚れていた。


その気持ちは良くわかるけど、私の気持ちは粟立つ。


樫本先生は大人だし、立っているだけで絵になるモデル並みのイケメンなのはわかる。
だけどみんなが夢中になっているのを見て、面白くない気分になるのは一体どういう事なんだろう。


なんとなくモヤモヤして、自分でも唇が尖ってしまうのを隠しきれないまま、私は結局準備に集中出来なくなる。
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