解ける螺旋
昨日のパーティー会場で無視されたからかな、なんて思ってみたけれど、多分そんな些細な事じゃない。


今日学生と接している先生を見て、誰もが私と同じ様に扱われているのを見たら、昨日先生から言われた言葉が全部ただの社交辞令だったんだと言われた気がした。
そのことにそれなりに傷付いたんだと思うと、ますますモヤモヤして来た。


「……奈月。ここの配線、間違ってる」


突如後ろから声を掛けられて、え!? と大きな声を上げてしまった。
自分でも驚いた自分の声に、浴びせられた健太郎はもっと驚いた顔をしている。


「なんだよ。びっくりした。
……放電する実験なんだから、もっと気を付けろよ。ほら、ここ」

「あ、ごめん」


健太郎に指摘された部分を見ると、確かに間違った極に繋げてしまっていた。
慌てて繋げ直そうとして、私の手に誰かの手が重なる。


「……!?」


驚いて振り返ると、困った様な笑みを浮かべた樫本先生がいた。


「上の空、ってとこだね。
貸して。僕がやろう」


私の手を軽く握ってどかすと、先生は手品みたいに簡単に配線を直して行く。
それを見ながら、私は思わず握られた手をもう片方の自分の手で握ってしまった。


何か言いたそうにしていた健太郎は小さく溜め息をついて、結局他の学生に呼ばれてそっちに小走りで行ってしまう。
そして私はその場に先生と取り残されてしまった。


「……結構簡単なところでミスしてる。
昨日のパーティー疲れかな。
でも気を抜かないで。
実験に身を入れてもらわないと、学生にも示しがつかない。
相沢さんはドクターの研究生なんだから」

「す、すみません」


当たり前の事を指摘されて恥ずかしい気持ちを抱えながら、私は会話に出たパーティーと言う言葉につい逃げ込んだ。
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