主さまの気まぐれ-百鬼夜行の王-【完】
その頃晴明の元には道長がやって来ていた。
「い、息吹は…帝の中宮に本気でなるつもりなのか?!」
「さあどうかな。しかし…罠にかかったのはやはりそなただったな」
隠すことなく思いきり落ち込んで肩を落としている道長に微笑みかけると、
途端嫌な空気を読み取った道長は床の晴明から距離を取って座り直した。
「俺に何か仕掛けるつもりだな?いやだぞ、何もせぬぞ!」
「ふふふ…何を怖がっている?ああ道長、どうしたことかそなたがやけに色っぽく見えるな」
「は、はあ!?何を馬鹿なことを…お、俺はその気はないぞ!お前がいくら女のような顔をしているとは言っても…!」
ずりずりと後ずさりをして襖にぶつかる。
だが晴明は妖しい笑みを湛えたまま半ば道長に覆い被さるようにして顔を覗き込んだ。
「禁断の世界を見てみるのも悪くはあるまい。己の可能性がさらに広がるやもしれぬぞ」
「わ、ちょ、やめ、やめろー!」
胸元に滑り込んでこようとした晴明の手から逃げるために襖に寄りかかると…
「おやおや、道長、大丈夫か?」
音を立てて襖が倒れ、襖と一緒に道長も倒れ込み、その拍子に札が剥がれた。
…それを待っていた晴明は、手を貸して道長を起こしてやると効力を失った札に息を吹きかけて術を吹き込み、道長が立て直した襖に貼り付けた。
「お、お前…妻を取らぬと思ったらそっちの気が…」
「今のは冗談だ。ん?どうした?顔が赤いぞ?」
「!!も、もう行く!馬鹿が、二度と同じことをするな!」
怒鳴りながら道長が去って行き、笑いの止まらなくなった晴明が肩を揺らしていると…そっと襖が開いて、息吹が顔を抱いた。
「父様?今道長様が…」
「ああ、ちょっと怒らせてしまったんだ。…息吹?その格好は…」
正座をして俯く息吹は薄く化粧も施されていて、晴明は嫌な予感に息吹を問い詰めようとすると…
「安部晴明、帝よりこれをそなたに返すようにと賜り、持ってきた」
「?……!こ、これは…」
――震える手で近衛兵が持ってきた大きな箱に触れた。
『葛の葉狐 毛皮』と書かれた紙…
葛の葉とは、母の名だ。
「息吹…?」
「弔ってあげて下さい」
笑顔で。
「い、息吹は…帝の中宮に本気でなるつもりなのか?!」
「さあどうかな。しかし…罠にかかったのはやはりそなただったな」
隠すことなく思いきり落ち込んで肩を落としている道長に微笑みかけると、
途端嫌な空気を読み取った道長は床の晴明から距離を取って座り直した。
「俺に何か仕掛けるつもりだな?いやだぞ、何もせぬぞ!」
「ふふふ…何を怖がっている?ああ道長、どうしたことかそなたがやけに色っぽく見えるな」
「は、はあ!?何を馬鹿なことを…お、俺はその気はないぞ!お前がいくら女のような顔をしているとは言っても…!」
ずりずりと後ずさりをして襖にぶつかる。
だが晴明は妖しい笑みを湛えたまま半ば道長に覆い被さるようにして顔を覗き込んだ。
「禁断の世界を見てみるのも悪くはあるまい。己の可能性がさらに広がるやもしれぬぞ」
「わ、ちょ、やめ、やめろー!」
胸元に滑り込んでこようとした晴明の手から逃げるために襖に寄りかかると…
「おやおや、道長、大丈夫か?」
音を立てて襖が倒れ、襖と一緒に道長も倒れ込み、その拍子に札が剥がれた。
…それを待っていた晴明は、手を貸して道長を起こしてやると効力を失った札に息を吹きかけて術を吹き込み、道長が立て直した襖に貼り付けた。
「お、お前…妻を取らぬと思ったらそっちの気が…」
「今のは冗談だ。ん?どうした?顔が赤いぞ?」
「!!も、もう行く!馬鹿が、二度と同じことをするな!」
怒鳴りながら道長が去って行き、笑いの止まらなくなった晴明が肩を揺らしていると…そっと襖が開いて、息吹が顔を抱いた。
「父様?今道長様が…」
「ああ、ちょっと怒らせてしまったんだ。…息吹?その格好は…」
正座をして俯く息吹は薄く化粧も施されていて、晴明は嫌な予感に息吹を問い詰めようとすると…
「安部晴明、帝よりこれをそなたに返すようにと賜り、持ってきた」
「?……!こ、これは…」
――震える手で近衛兵が持ってきた大きな箱に触れた。
『葛の葉狐 毛皮』と書かれた紙…
葛の葉とは、母の名だ。
「息吹…?」
「弔ってあげて下さい」
笑顔で。