主さまの気まぐれ-百鬼夜行の王-【完】
「一緒に父様の母様を見たかったんです。父様、早く」
息吹に急かされたが、これをどうやって帝から奪い取ろうかと考えて考えて、そして息吹を主さまに預けている間にその準備を整えたというのに…
あっさりと手元に戻って来た母が封じられた箱を指で撫でながら、晴明は何度も首を振った。
「息吹…こんな…帝と何か約束を交わしたな?私は許さぬぞ、これは返してきなさい。私は自分の手で母を取り戻してみせる」
「いいんです。私はもう帝の中宮になると決めたし、最後に父様のお役に立つことができました」
――まるで死に際の言葉のように聞こえて、“早く箱を空けて”とせがむ息吹を力いっぱい抱きしめて、声を震わせた。
「息吹…駄目だ…そなたはまだ私の手元に…」
「主さまも父様も、本当に私によくして頂いて…感謝しています。ねえ父様、早く」
「…ああ。見せてあげよう…」
指で封を切って箱を空けると…真っ白な美しい毛を持った狐が姿を現わした。
息吹は瞳を輝かせながら毛並みに触れて、満面の笑みではしゃいだ。
「綺麗…。とても綺麗な方だったんでしょう?」
「そうだよ。私が5つの時に、一条朝に狩られて殺された。そして父も…。息吹、ありがとう。これでようやく母を弔えるよ」
「はい。私の分もよろしくとお伝え下さい。父様…もう行きますね。もうお会いすることも…ぅ…」
嗚咽が漏れ、口を手で覆った息吹をまた抱きしめて、晴明は決意漲る光を一瞬瞳に宿らせると、息吹の背中を撫でながら優しい声で励ました。
「私は今から己のしたいことをやり、また主さまもそうするだろう。口出しをしてはいけないよ、これは自分たちのためでもあるのだからね」
「?…はい」
真っ白い浴衣が死に装束のように見えた。
晴明は母の頭を愛しげな手つきで撫でて腰を上げた息吹を見上げて笑いかけた。
「時間を引き延ばしなさい。帝を焦すのだ。その間に私と主さまは準備を整える。いいね?」
「でも…」
「宴が始まるよ。盛大な宴が」
百鬼夜行が姫を取り戻しにやって来る。
そして晴明は得た力を、引き出す。
息吹に急かされたが、これをどうやって帝から奪い取ろうかと考えて考えて、そして息吹を主さまに預けている間にその準備を整えたというのに…
あっさりと手元に戻って来た母が封じられた箱を指で撫でながら、晴明は何度も首を振った。
「息吹…こんな…帝と何か約束を交わしたな?私は許さぬぞ、これは返してきなさい。私は自分の手で母を取り戻してみせる」
「いいんです。私はもう帝の中宮になると決めたし、最後に父様のお役に立つことができました」
――まるで死に際の言葉のように聞こえて、“早く箱を空けて”とせがむ息吹を力いっぱい抱きしめて、声を震わせた。
「息吹…駄目だ…そなたはまだ私の手元に…」
「主さまも父様も、本当に私によくして頂いて…感謝しています。ねえ父様、早く」
「…ああ。見せてあげよう…」
指で封を切って箱を空けると…真っ白な美しい毛を持った狐が姿を現わした。
息吹は瞳を輝かせながら毛並みに触れて、満面の笑みではしゃいだ。
「綺麗…。とても綺麗な方だったんでしょう?」
「そうだよ。私が5つの時に、一条朝に狩られて殺された。そして父も…。息吹、ありがとう。これでようやく母を弔えるよ」
「はい。私の分もよろしくとお伝え下さい。父様…もう行きますね。もうお会いすることも…ぅ…」
嗚咽が漏れ、口を手で覆った息吹をまた抱きしめて、晴明は決意漲る光を一瞬瞳に宿らせると、息吹の背中を撫でながら優しい声で励ました。
「私は今から己のしたいことをやり、また主さまもそうするだろう。口出しをしてはいけないよ、これは自分たちのためでもあるのだからね」
「?…はい」
真っ白い浴衣が死に装束のように見えた。
晴明は母の頭を愛しげな手つきで撫でて腰を上げた息吹を見上げて笑いかけた。
「時間を引き延ばしなさい。帝を焦すのだ。その間に私と主さまは準備を整える。いいね?」
「でも…」
「宴が始まるよ。盛大な宴が」
百鬼夜行が姫を取り戻しにやって来る。
そして晴明は得た力を、引き出す。