主さまの気まぐれ-百鬼夜行の王-【完】
息吹が戻って来るのを今か今かと待っていた帝は白い浴衣を着て待ち構えていた。


…今まで美しく見えた女御や更衣たちが目に入らなくなった。


この国で最も恐ろしき百鬼夜行の王に守られて、晴明の養女である息吹の出生は聞いたことがなかったが、身分など関係なく息吹が欲しくてたまらなかったのだ。


「…戻りました」


焦らされ続けて待ち続けた息吹がようやく帰って来て、酒を飲んで時間を潰していた帝は息吹を隣に座らせると盃を持たせた。


「一献どうだ?上等な酒だ」


「では…」


晴明は酒に強くいつも晩酌をしていたので、息吹も必然的に酒に強くなっていて、度の強い酒を一気に飲み干すと帝が感心したように声を上げた。


「また私の楽しみが増えた。息吹姫、これからは毎夜共に酒を交わそう。そして…」


息吹の肩に手を置くとするりと逃げて、畳に置いていた帝の扇子を開くと顔を隠しながら優雅に立ち上がった。


「一指し舞います。見たいですか?」


「ああ、見たいとも。これは酔ってしまいそうだな」


――そのまま酔い潰れてしまえばいいのに。


そんなことを思いながら、いつも晴明や道長が誉めてくれた舞を踊って、なるべくゆっくり心がけて、うっとりしている帝を時々視野に入れながら時間が経つのを引き延ばしていたが…


逆に息吹の舞いに刺激された帝が辛抱できずに息吹の手を引いて腕の中に倒れ込ませると、そのまま押し倒した。


「ゃ…っ!」


「息吹姫…葛の葉狐は晴明に返したぞ。次はそなたが私との約束を果たすべき時だろう?さあ…」


灯篭の火を消され、あっという間に帯が外されて、闇夜に息吹の白い身体が見えて帝はごくりと喉を鳴らした。


「美しい…!息吹姫、私の中宮と成り得るのはやはりそなただけだ…!」


「…ここではいやです。床へ…」


自分が今から帝に何をされるかを考えて怖くなってぎゅっと目を閉じた。


帝は逸る気を抑えながら息吹を抱き上げて床へと移動させ、落ちた浴衣と息吹に興奮を隠しきれなくなっていた。


「息吹姫…、そなたが愛しい…」


「…」


応えない。

運命を受け入れて、唇を開いた時――
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