主さまの気まぐれ-百鬼夜行の王-【完】
主さまはゆっくりと帝の右のわき腹に刃を埋めていった。
天叢雲の刀身は血を吸ってみるみる赤く染まっていき、苦しむ帝に笑いかけた。
「苦しいか?お前は息吹をこれ以上に苦しめているんだぞ。死ね、そして2度と転生するな」
血の泡を吐き、帝の瞳から生気が抜けていき、あと少しだと思った時――
「主さま、やめて…っ!」
「!息吹……、お前、その格好は…?!」
――白い浴衣を着ずに胸に押し抱いて身体を隠している息吹が部屋の中から主さまの見える位置まで出てきた。
その姿を見た主さまの身体から鬼火が吹き出し、天叢雲を帝の身体から引き抜いた。
「殺さないで、お願い…!」
「…息吹…お前…帝に…」
「……何もされてません…」
その悲しみに歪んだ顔からして、何もされていないというのは絶対に嘘だ。
あんな裸同然の姿にさせられて、一体どんな目に遭ったのか…
「十六夜、後は私に任せろ」
「晴明…大丈夫なのか?」
妖が人を襲い、人が逃げ惑う中、姿を見せたのはいつものように飄々とした晴明だった。
主さまに心配されてしまってかなり不本意そうな表情を浮かべていたが、手にしていた濃紺の打掛を放るとそれを主さまが腕を伸ばして空中で掴んだ。
倒れ込み、苦悶する帝を無視して部屋へ入り込むと…息吹の身体を打掛で包み込み、頭を撫でた。
「…怖かっただろう。もう大丈夫だ」
「ぅ、っく、主、さまぁ…」
「お前が止めなかったら…俺は殺す価値もない奴を殺すところだった」
――息吹がぎゅっと抱き着いてきた。
やわらかな素肌の感触が身体に伝わってきて、ぎゅっと瞳を閉じると息吹の身体が見えないように打掛で包み込むと立ち上がって外へ出ると――
皆が固唾を飲んで、庭を見つめていた。
“それ”を見た主さまも、思わず息を呑んで、見上げた。
笑っているのは晴明ただ1人。
“それ”とは…朱雀、青竜、玄武、白虎の、四神と呼ばれる伝説上の神獣。
晴明はこの一条朝を滅ぼすために、四神との契約を交わしたのだ。
「さあ、一条帝に怒りの鉄槌を」
笑う。笑う。艶やかに。
天叢雲の刀身は血を吸ってみるみる赤く染まっていき、苦しむ帝に笑いかけた。
「苦しいか?お前は息吹をこれ以上に苦しめているんだぞ。死ね、そして2度と転生するな」
血の泡を吐き、帝の瞳から生気が抜けていき、あと少しだと思った時――
「主さま、やめて…っ!」
「!息吹……、お前、その格好は…?!」
――白い浴衣を着ずに胸に押し抱いて身体を隠している息吹が部屋の中から主さまの見える位置まで出てきた。
その姿を見た主さまの身体から鬼火が吹き出し、天叢雲を帝の身体から引き抜いた。
「殺さないで、お願い…!」
「…息吹…お前…帝に…」
「……何もされてません…」
その悲しみに歪んだ顔からして、何もされていないというのは絶対に嘘だ。
あんな裸同然の姿にさせられて、一体どんな目に遭ったのか…
「十六夜、後は私に任せろ」
「晴明…大丈夫なのか?」
妖が人を襲い、人が逃げ惑う中、姿を見せたのはいつものように飄々とした晴明だった。
主さまに心配されてしまってかなり不本意そうな表情を浮かべていたが、手にしていた濃紺の打掛を放るとそれを主さまが腕を伸ばして空中で掴んだ。
倒れ込み、苦悶する帝を無視して部屋へ入り込むと…息吹の身体を打掛で包み込み、頭を撫でた。
「…怖かっただろう。もう大丈夫だ」
「ぅ、っく、主、さまぁ…」
「お前が止めなかったら…俺は殺す価値もない奴を殺すところだった」
――息吹がぎゅっと抱き着いてきた。
やわらかな素肌の感触が身体に伝わってきて、ぎゅっと瞳を閉じると息吹の身体が見えないように打掛で包み込むと立ち上がって外へ出ると――
皆が固唾を飲んで、庭を見つめていた。
“それ”を見た主さまも、思わず息を呑んで、見上げた。
笑っているのは晴明ただ1人。
“それ”とは…朱雀、青竜、玄武、白虎の、四神と呼ばれる伝説上の神獣。
晴明はこの一条朝を滅ぼすために、四神との契約を交わしたのだ。
「さあ、一条帝に怒りの鉄槌を」
笑う。笑う。艶やかに。