主さまの気まぐれ-百鬼夜行の王-【完】
天の四方の方角を司る神獣は見上げなければならないほどの大きな巨体。

御所の庭は4体の神獣で手狭になり、皆が蜘蛛の子を散らすかのようにして逃げ出した。


倒れ込み、苦悶に顔を歪める帝はそこで最も恐れなければならない2人組を完全に敵に回していたことに気が付いた。


『晴明、我は何をすればいい?』


「暴れてくれればいい。後はこちらが始末しよう」


『わかった』


白虎の問いにそう答えると、朱雀や玄武たちが建屋を踏みつぶしたり炎を噴くと御所内から着の身着のままの女御たち女や官僚たちが出て来た。


「息吹姫1人の、ために、こんな…っ」


「私は愛娘を目に入れても痛くないほどに可愛がっているのだ。そしてそこの百鬼夜行の王もな。帝よ、そなたの最も大切なものを奪ってやろう」


「!?」


晴明が五芒星の印を結んだ。

さらに何かを呼び出すつもりなのか、何かを呟き、四神が御所で暴れていてもぬけの殻になっていた庭に突如として現れたのは…


「十二天将よ、この帝は今まで罪もない者たちの命を奪い、冒涜してきた。2度と同じ巡り合せをすることのないよう、裁きを」


『子は親を見て育つ。この者に子ができぬよう、種を奪ってやろう』


――庭で白い光が炸裂して、息吹が恐怖に身を竦めると…


主さまは息吹をきつく抱きしめて、その光景を見ないようにしてやった。


「主さま…どうなってるの…!?」


「…お前は何も気にしなくていい。行くぞ」


息吹の頭を胸に押し抱いて抱き上げ、足早に帝の私室を出て、悲願を成就させた晴明に笑いかけた。


「とことん懲らしめてやれ。俺の屋敷で待つ」


「父様…、父様!」


「すぐに帰るからね、待っていておくれ」


快活な返事だった。

先程までは起きるのもやっとという感じだったのに、今後2度と帝に子孫が出来ぬようにして、御所を半壊させた。

気を失った帝を塵でも見るような目で一瞥した後、母狐が収められた箱を大切そうに両手に抱え、庭に下り立った。


「母上…あなたの無念をようやく晴らすことができました。…息吹のおかげです」


――箱があたたかくなった気がして、微笑んだ。
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