主さまの気まぐれ-百鬼夜行の王-【完】
藤色の浴衣を手に着替えを迫って来る主さまの瞳は青白い炎が燈り、暗闇の中で輝いていた。
御所では確か角も生えていた…だけど、全然怖くなかった――
「着替え位1人でできるもん」
「口答えするな。お前が小さかった頃は俺がいつも着替えをさせてやっていたんだ。向こうを向け」
そう言われてみれば恥ずかしくない気がしてきて、だけど口づけをされたことは忘れていない。
あの意味をどうしても知りたかったが、今は助けに来てくれた主さまにとても感謝しているので言うことを聞こうと思って背を向けて…
包まっていただけの白い浴衣を畳に落とした。
――自分の背中に痛いほど主さまの視線を感じる。
しかも黙ったままで、少し離れた所から近寄っても来ない。
…息吹は両手で胸を庇いながらか細い声で問うた。
「私…貧相?がりがりだから…食べたくもない?」
「……もっと太らせてから食う。晴明の屋敷に戻れると思うな。お前はこれから…」
肩にぱさりと浴衣がかけられて、肩を抱かれていきなり身体を回転させられると向い合せになり、背の高い主さまの唇から僅かに牙が出ているのが見えて、微笑んだ。
「いつかは食べようと思って私を育てたんでしょ?主さまの気まぐれでも私は嬉しかった。でないと…私はこうして生きていなかったと思うから」
「…味見させろ」
「え…」
顔が近付いてきたと思ったら、主さまの牙が右の肩にやわらかく食い込んだ。
少し痛かったがやっぱり怖くはなく、そのまま肩を押されて帯もつけていないまま床に押し付けられた。
「私は…美味しい?」
「…不味い。もっと太れ」
――見つめ合う。
可憐な花の蕾のように開く息吹の唇に、主さまの親指が触れた。
「もう少し味見させろ」
瞳を閉じる暇もなく主さまの唇が重なってきた。
逃げられないように顔の横で手首を強く掴まれて両手を封じられ、羽織っただけの浴衣は息吹の白い肌を浮かび上がらせた。
寝ていない時にこうして主さまに求められて、息吹の魂は、喜びに震えていた。
「主、さま…」
「…餓鬼は早く寝ろ」
身体を起こして去って行く。
御所では確か角も生えていた…だけど、全然怖くなかった――
「着替え位1人でできるもん」
「口答えするな。お前が小さかった頃は俺がいつも着替えをさせてやっていたんだ。向こうを向け」
そう言われてみれば恥ずかしくない気がしてきて、だけど口づけをされたことは忘れていない。
あの意味をどうしても知りたかったが、今は助けに来てくれた主さまにとても感謝しているので言うことを聞こうと思って背を向けて…
包まっていただけの白い浴衣を畳に落とした。
――自分の背中に痛いほど主さまの視線を感じる。
しかも黙ったままで、少し離れた所から近寄っても来ない。
…息吹は両手で胸を庇いながらか細い声で問うた。
「私…貧相?がりがりだから…食べたくもない?」
「……もっと太らせてから食う。晴明の屋敷に戻れると思うな。お前はこれから…」
肩にぱさりと浴衣がかけられて、肩を抱かれていきなり身体を回転させられると向い合せになり、背の高い主さまの唇から僅かに牙が出ているのが見えて、微笑んだ。
「いつかは食べようと思って私を育てたんでしょ?主さまの気まぐれでも私は嬉しかった。でないと…私はこうして生きていなかったと思うから」
「…味見させろ」
「え…」
顔が近付いてきたと思ったら、主さまの牙が右の肩にやわらかく食い込んだ。
少し痛かったがやっぱり怖くはなく、そのまま肩を押されて帯もつけていないまま床に押し付けられた。
「私は…美味しい?」
「…不味い。もっと太れ」
――見つめ合う。
可憐な花の蕾のように開く息吹の唇に、主さまの親指が触れた。
「もう少し味見させろ」
瞳を閉じる暇もなく主さまの唇が重なってきた。
逃げられないように顔の横で手首を強く掴まれて両手を封じられ、羽織っただけの浴衣は息吹の白い肌を浮かび上がらせた。
寝ていない時にこうして主さまに求められて、息吹の魂は、喜びに震えていた。
「主、さま…」
「…餓鬼は早く寝ろ」
身体を起こして去って行く。