主さまの気まぐれ-百鬼夜行の王-【完】
親に会わせるということがどういうことだかさすがの息吹もわかっている。


自分もいつか好きな男ができたら晴明に会わせて、仲良くなってもらえたらいいなと思っているが…


主さまと晴明は既知の仲で、さらに親友以上の関係とも言えるだろう。


「息吹?聴いてんのか?」


「え?う、うん、聴いてるけど…でも雪ちゃん…私まだお返事してないし…」


「わかってる。わかってるけど、会ってほしいんだ。俺が嫁さんになってほしい女は…その…お、お前だけだからさっ」


「…雪ちゃん…」


きゅんとしてしまい、雪男の顔がまるで見れなくなってしまうと、雪男も顔を真っ赤にさせながらもごろんと横になって息吹の膝枕にあやかった。



「氷雨って呼べって言ったろ?」


「でもなんか恥ずかしいし…それに雪ちゃん火傷しちゃうっ」


「これっくらい平気だって。もしさ…俺とお前が両想いになったら、俺に触っても冷たく感じなくなるんだってさ。早くそうなってほしいなって思ってる」


本来は長く触れていると触れた部分から氷になり、砕け散ってしまう運命。
息吹と触れ合っても痛みを感じない…そう在りたいと心からそう思い、戸惑う息吹の頬を冷たい手で引っ張った。


「んな真剣に考えんなって。幽玄町に帰ったら母さんに手紙書くし、幽玄町に来るのも時間かかるだろうから、母さんが来てくれるっていうんなら会ってくれよ」


「うん、それならいいよ。雪ちゃんのお母さんかあ…絶対綺麗な人だよね。雪ちゃんはお母さん似でしょ?だからかっこいいんだよね」


無邪気にそう言った息吹の長い黒髪が肩からさらりと零れて額に触れると、くいっと引っ張って口元に寄せると口づけをした。


「ゆ、雪ちゃんっ?」


「ほんとはお前の唇にしたいんだけど…駄目だろ?」


「だ、駄目!絶対駄目!」


「このやろ、絶対とか言うなよな!傷つくだろ!」


…雪男と居ると楽しいしふざけ合えるから大好きだ。


あくまで“男”としてではなく、だが。
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