主さまの気まぐれ-百鬼夜行の王-【完】
主さまのことを好きなのだという自覚のある息吹は雪男の母が主さまの嫁候補でもあったと聞いて心中穏やかではなかった。
「私…お昼寝します」
「お前…何か誤解してないか?俺は…」
「別に。じゃあ父様、雪ちゃん、おやすみなさい」
襖を閉めて会話を拒絶した息吹は明らかに怒っており、事の発端を生み出した晴明は主さまから凄まじい殺気を叩きつけられながらものほほんとしていた。
「お前のせいだぞ」
「なに?いずれ知られることでもあったはずだぞ。私自身雪女とそなたが夫婦になると思っていたが」
そしてこの話は雪男にとっても青天の霹靂だったらしく、口をぽかんと開けて晴明の肩を強く押した。
「今の話…本当なのか?」
「ああ。主さまは妹のように、と言っていたが雪女は少なくともこいつのことを好いていたはずだが。はて、他人の色恋は私にもよくわからぬ」
「俺は…てっきり父さんのことが初恋だと…」
「少なくとも好いていたからそなたが生まれたのだ。結果論だがそれが事実。戸惑うことはあるまい」
その間主さまは何も言わずに背を向けて寝転がっていたが、聞き耳を立てていることには2人とも気付いていた。
「私としても気の多い男の元に息吹を嫁がせるつもりもなければ本心を伝えることもできぬ不器用な男もお断りだがな。…?2人共難しい顔をしているがどうした?」
…この安部晴明という男は難敵だ。
他人の色恋はわからぬ、と言いながらも誰よりも観察眼に長け、的確に弱みを突いてくる。
そして何の気なしに床の間の襖を開けて中へ入ると主さまたちを慌てさせた。
「お、おい晴明」
「どれ息吹、父様が子守唄でも歌ってやろうか?」
「本当?晴明様のお歌大好き。声が低くて好きだもの」
――閉められた襖の中から楽しげな2人の会話が聴こえ、主さまと雪男は渋面を作った。
「この助平。俺の母さんまで主さまの毒牙にかけたのかよ」
「助平でもなければ毒牙にかけてもない。誤解するな」
こちらでは小声で諍いが始まっていた。
「私…お昼寝します」
「お前…何か誤解してないか?俺は…」
「別に。じゃあ父様、雪ちゃん、おやすみなさい」
襖を閉めて会話を拒絶した息吹は明らかに怒っており、事の発端を生み出した晴明は主さまから凄まじい殺気を叩きつけられながらものほほんとしていた。
「お前のせいだぞ」
「なに?いずれ知られることでもあったはずだぞ。私自身雪女とそなたが夫婦になると思っていたが」
そしてこの話は雪男にとっても青天の霹靂だったらしく、口をぽかんと開けて晴明の肩を強く押した。
「今の話…本当なのか?」
「ああ。主さまは妹のように、と言っていたが雪女は少なくともこいつのことを好いていたはずだが。はて、他人の色恋は私にもよくわからぬ」
「俺は…てっきり父さんのことが初恋だと…」
「少なくとも好いていたからそなたが生まれたのだ。結果論だがそれが事実。戸惑うことはあるまい」
その間主さまは何も言わずに背を向けて寝転がっていたが、聞き耳を立てていることには2人とも気付いていた。
「私としても気の多い男の元に息吹を嫁がせるつもりもなければ本心を伝えることもできぬ不器用な男もお断りだがな。…?2人共難しい顔をしているがどうした?」
…この安部晴明という男は難敵だ。
他人の色恋はわからぬ、と言いながらも誰よりも観察眼に長け、的確に弱みを突いてくる。
そして何の気なしに床の間の襖を開けて中へ入ると主さまたちを慌てさせた。
「お、おい晴明」
「どれ息吹、父様が子守唄でも歌ってやろうか?」
「本当?晴明様のお歌大好き。声が低くて好きだもの」
――閉められた襖の中から楽しげな2人の会話が聴こえ、主さまと雪男は渋面を作った。
「この助平。俺の母さんまで主さまの毒牙にかけたのかよ」
「助平でもなければ毒牙にかけてもない。誤解するな」
こちらでは小声で諍いが始まっていた。