主さまの気まぐれ-百鬼夜行の王-【完】
半妖の成長は人よりもかなり早い。

晴明も生まれてからまだそんなに年月は経っていないし、この先人よりも長く生きるだろう。

雪男の父は早くに亡くなり、だが日に日に成長する自分を愛しんでくれていた。


…父と母の愛を疑いたくはない。


「もう1度言っておくが雪女…氷樹(ひょうじゅ)と俺は百鬼とその主という関係性でしかない。母親を疑っているのか?」


「疑ってねえし!俺が疑ってんのはむしろ主さまの方なんだけど」


「はあ?俺が何をしたというんだ」


「絡新婦にしろ息吹にしろ…女に手を出すのが早くね?それって大事にしてない証拠なんじゃね?」


火花がばちばちと散り、瞳を細めて主さまがすう、と腕を伸ばした時――


「ようやく眠ってくれた。私の子守唄は相変わらず効果絶大だな」


自画絶賛しつつ床の間から出て来た晴明は、息吹が起きないように小声で言い争いをしている2人を見て…にたりと笑った。


「…その笑みを引っ込めろ」


「笑うのも駄目なのか?もう1度言っておくが色ぼけと優柔不断な男はお断りだ。さあ、まだ争うつもりならば外でやって来い。息吹が起きてしまう」


結局は息吹至上主義の3人は誰も部屋から出て行くことなく、主さまは縁側で寝転び、雪男は部屋の隅でどっしり腰を据えて居座り、晴明はのんびりと何かの書物を読んだ。


――そして夕刻になり、息吹が床の間から出て来ると3人が一斉に顔を上げたので息吹の脚が止まる。


「私…寝坊しちゃった?」


「もう発てるなら行くぞ。…俺と一緒に八咫烏に乗れ」


「やだ、晴明様と乗るから」


「駄目だ、俺と乗れ」


俺様な一面がどうしても全面出てしまう主さまが頭ごなしに命令すると、息吹が晴明の背中にさっと隠れてしまい、またもや墓穴を掘ってしまったことに気が付いた。


「…晴明と一緒がいいんだな?わかった」


すんなりと諦めて庭に出ると、夕暮れ時になって集結し始めた妖たちが次々と主さまに声をかけていて、息吹は晴明の袖を引っ張った。


「父様…」


「あれは不器用な男なのだから疑うのではないよ」


「…はい」


小さな声で返事をした。
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