主さまの気まぐれ-百鬼夜行の王-【完】
夕刻に高千穂を出発し、幽玄町へ着いたのは翌日の朝だった。
今か今かと待ち受けていた山姫はその日の雑事を投げ出し、主さまの屋敷の庭を行ったり来たりしていたので、主さまと百鬼の姿が見えた時は飛び上がって喜んだ。
「帰ってきた!」
留守を言い渡された妖たちも眠たさに目を擦りながら空を見上げ、牛車が門の前に着くと真っ先に御簾を上げて、晴明の膝で眠っている息吹を抱き起した。
「息吹、お帰り!」
「おやおや、私には一言もないのかい?」
「!なんであんたに“お帰り”なんて言わなきゃならないんだい!?手を離しておくれ!」
いつの間にか晴明に右の腕を握られていたので振り払うと息吹が目を覚ました。
「ん…あ、母様!じゃあ幽玄町に着いたの?」
「そうだよこの寝ぼすけ。さ、母様が床を敷いておいてあげたからゆっくり眠りな」
「せっかく帰ってきたんだから起きてる!母様、私のお話聞きたくないの?聴いてほしいお話が沢山あるの!」
「待て、その前に俺が山姫に用がある。お前は猫又と遊んでろ」
主さまが割って入ってきたので息吹が平静を装って素直に頷くと、烏帽子を取った晴明が欠伸をしながら山姫の袖を握って離さない息吹の頭を撫でて微笑んだ。
「父様との約束はまた後程ということで」
「はい!ふふふふ」
父娘揃って笑い出し、その仲の良さに主さまが瞳を細め、山姫は息吹の手を引きながら気の強そうな美貌を寄せた。
「なんだい、母様に隠し事をするつもりじゃないだろうね」
「えっ?は、母様にだってお話できないこともあります!じゃあね母様、私は庭で猫ちゃんと遊んでます」
「遊ぶにゃ!遊ぶにゃ!」
股の分かれた尻尾を振り回して喜ぶ猫又と蔵の方へ消えて行った息吹を見送り、面々は急に真面目な顔になった。
「主さま?」
「息吹のことで話さなければならないことがある」
山姫はまだ何も知らないので、一言そう告げるとさっさと縁側から中へと入ってしまった。
「相変わらずだねえ」
「そなたも相変わらず美しいな」
「!」
この男も、相変わらず。
今か今かと待ち受けていた山姫はその日の雑事を投げ出し、主さまの屋敷の庭を行ったり来たりしていたので、主さまと百鬼の姿が見えた時は飛び上がって喜んだ。
「帰ってきた!」
留守を言い渡された妖たちも眠たさに目を擦りながら空を見上げ、牛車が門の前に着くと真っ先に御簾を上げて、晴明の膝で眠っている息吹を抱き起した。
「息吹、お帰り!」
「おやおや、私には一言もないのかい?」
「!なんであんたに“お帰り”なんて言わなきゃならないんだい!?手を離しておくれ!」
いつの間にか晴明に右の腕を握られていたので振り払うと息吹が目を覚ました。
「ん…あ、母様!じゃあ幽玄町に着いたの?」
「そうだよこの寝ぼすけ。さ、母様が床を敷いておいてあげたからゆっくり眠りな」
「せっかく帰ってきたんだから起きてる!母様、私のお話聞きたくないの?聴いてほしいお話が沢山あるの!」
「待て、その前に俺が山姫に用がある。お前は猫又と遊んでろ」
主さまが割って入ってきたので息吹が平静を装って素直に頷くと、烏帽子を取った晴明が欠伸をしながら山姫の袖を握って離さない息吹の頭を撫でて微笑んだ。
「父様との約束はまた後程ということで」
「はい!ふふふふ」
父娘揃って笑い出し、その仲の良さに主さまが瞳を細め、山姫は息吹の手を引きながら気の強そうな美貌を寄せた。
「なんだい、母様に隠し事をするつもりじゃないだろうね」
「えっ?は、母様にだってお話できないこともあります!じゃあね母様、私は庭で猫ちゃんと遊んでます」
「遊ぶにゃ!遊ぶにゃ!」
股の分かれた尻尾を振り回して喜ぶ猫又と蔵の方へ消えて行った息吹を見送り、面々は急に真面目な顔になった。
「主さま?」
「息吹のことで話さなければならないことがある」
山姫はまだ何も知らないので、一言そう告げるとさっさと縁側から中へと入ってしまった。
「相変わらずだねえ」
「そなたも相変わらず美しいな」
「!」
この男も、相変わらず。