主さまの気まぐれ-百鬼夜行の王-【完】
すでに晴明が山姫に求婚したと知った息吹は嬉しい気持ちと同時に焦りも感じてしまい、朝になると鏡台の前で慣れない化粧をしていて晴明に笑われた。
「珍しいことが起きているが、今日は槍でも降るのだろうか?」
「だって…もうっ、父様からかわないで下さい!」
「ふふふ、からかうのは私の性分だよ。さあ行こう、そんなことをせずとも私の娘は綺麗なのだから」
お世辞でもなんでもなく、小さな頃から息吹は可愛かったが最近は特に綺麗になり、薄化粧をした息吹を主さまが見たら…と想像するとすでに晴明の肩は揺れていた。
そして牛車に乗り込み、相変わらず綺麗な町並みを通り抜け、幽玄橋に着くとさっきまで人々で賑わっていた界隈には人っ子ひとり、居なくなっていた。
ここから先は赤鬼と青鬼が立ち、平安町からでもその巨体が見える。
そしてその奥は、主さまが支配する幽玄町。
平安町と幽玄町との間で今まで争い事が起こっていないのは、主さまの家系が遥か昔から朝廷と『不可侵条約』交わしているからだ。
だが一たび双方のどちらかがこの条約を破れば…この国はひどいことになる。
主さまは今までで1番穏やかな性格の持ち主とも言える。
…あれでも。
「赤ー、青ー!」
「おお息吹!久しぶりだなこいつ!ちょっと抱っこさせろ!」
赤鬼と青鬼から言わせれば、“息吹を拾ったのは自分たちだ”という自負がある。
主さまよりも山姫よりも先に息吹の母から息吹を受け取り、赤子の息吹を腕に抱いた感触は今でも忘れていない。
「もう幽玄町には住まないのか?」
「これこれ、息吹を惑わせるのではないよ」
交互に息吹を抱っこして撫でまくっていた赤鬼と青鬼が牛車の中に乗せてくれて、外見は怖いが心は優しい彼らと話すことができて上機嫌になった息吹は晴明の膝に上り込んで肩を揺らした。
「優しい妖が多いから幽玄町って大好き」
「そんな妖が多いのは主さまの統治のおかげなのだよ」
「へえ…主さまってすごいんですね!」
近くに居すぎるとよくわからないが、晴明の話に息吹は改めて主さまを見直した。
「珍しいことが起きているが、今日は槍でも降るのだろうか?」
「だって…もうっ、父様からかわないで下さい!」
「ふふふ、からかうのは私の性分だよ。さあ行こう、そんなことをせずとも私の娘は綺麗なのだから」
お世辞でもなんでもなく、小さな頃から息吹は可愛かったが最近は特に綺麗になり、薄化粧をした息吹を主さまが見たら…と想像するとすでに晴明の肩は揺れていた。
そして牛車に乗り込み、相変わらず綺麗な町並みを通り抜け、幽玄橋に着くとさっきまで人々で賑わっていた界隈には人っ子ひとり、居なくなっていた。
ここから先は赤鬼と青鬼が立ち、平安町からでもその巨体が見える。
そしてその奥は、主さまが支配する幽玄町。
平安町と幽玄町との間で今まで争い事が起こっていないのは、主さまの家系が遥か昔から朝廷と『不可侵条約』交わしているからだ。
だが一たび双方のどちらかがこの条約を破れば…この国はひどいことになる。
主さまは今までで1番穏やかな性格の持ち主とも言える。
…あれでも。
「赤ー、青ー!」
「おお息吹!久しぶりだなこいつ!ちょっと抱っこさせろ!」
赤鬼と青鬼から言わせれば、“息吹を拾ったのは自分たちだ”という自負がある。
主さまよりも山姫よりも先に息吹の母から息吹を受け取り、赤子の息吹を腕に抱いた感触は今でも忘れていない。
「もう幽玄町には住まないのか?」
「これこれ、息吹を惑わせるのではないよ」
交互に息吹を抱っこして撫でまくっていた赤鬼と青鬼が牛車の中に乗せてくれて、外見は怖いが心は優しい彼らと話すことができて上機嫌になった息吹は晴明の膝に上り込んで肩を揺らした。
「優しい妖が多いから幽玄町って大好き」
「そんな妖が多いのは主さまの統治のおかげなのだよ」
「へえ…主さまってすごいんですね!」
近くに居すぎるとよくわからないが、晴明の話に息吹は改めて主さまを見直した。