主さまの気まぐれ-百鬼夜行の王-【完】
一瞬何かの気配を感じて空を仰いだ主さまは、猫又を撫で回して遊んでいる息吹の腕を掴んで縁側に上げると用心深く辺りを見回した。
「主さま?」
「…中に入れ。いきなり動くとまた倒れてしまうぞ」
「うん。じゃあね猫ちゃんたち。今日も百鬼夜行あるんでしょ?みんなちゃんと寝てね」
「お前もちゃんと身体休めろよ。元気になって本当によかった」
わいわい騒ぎながら各々が寝床にしている場所へ帰って行くと、息吹は主さまの部屋に戻って床の上にちょこんと正座した。
「主さま」
「…なんだ」
「すぐにお嫁さんにしてくれるって言ったよね?」
「!げほっ」
お茶を飲んでいた主さまが咽てしまい、背中を撫でてやりつつも息吹は追及の手を緩めない。
「言ったよね?」
「…言ったが…それがなんだ」
「気まぐれ…とか言わないよね?絶対聴いたもん。もう父様を説得したの?みんなには言ったの?」
「…まだだが…いいからもう寝ろ。俺も眠りたい」
「じゃあ一緒に寝よ」
「…はあ?お、お前…意味がわかって言ってるのか?」
「え?何が?」
…きょとん顔の息吹の顔に、別に深い意味はないのだとわかった主さまはしっしと手を払って自分の床に寝転がったのだが…もそりと布団が動いたのでまさかと思って肩越しに振り返ってみると――
「…何をしている」
「一緒に寝るの。駄目?」
何も考えていない行動に重たい息をついた主さまは、仕方なく身体の向きを変えて息吹と真向かいになると、頬杖を突いて露出している肌を見分した。
「…どこも傷ついていないか?」
「うん。まだちょっと身体が痛いけど…大丈夫。主さま…」
――ねだるように唇を半開きにしてみせた息吹の精一杯の誘惑に主さまが抗えるはずもなく、親指で可憐な唇に触れて…顔を近付けた。
「…食われたいのか」
「うん…食べてもいいよ。私…主さまの食べ物だから齧っても大丈夫。私…人じゃないからきっとすぐ元通りになるでしょ?」
「…齧ったりしない。あまり俺を猛らせるな。怖い思いをするぞ」
「しないよ。主さまを怖いと思ったことなんてないもん」
ゆっくりと唇が重なった。
優しかったものがすぐ激しくなり、一瞬の夢のような時間が流れた。
「主さま?」
「…中に入れ。いきなり動くとまた倒れてしまうぞ」
「うん。じゃあね猫ちゃんたち。今日も百鬼夜行あるんでしょ?みんなちゃんと寝てね」
「お前もちゃんと身体休めろよ。元気になって本当によかった」
わいわい騒ぎながら各々が寝床にしている場所へ帰って行くと、息吹は主さまの部屋に戻って床の上にちょこんと正座した。
「主さま」
「…なんだ」
「すぐにお嫁さんにしてくれるって言ったよね?」
「!げほっ」
お茶を飲んでいた主さまが咽てしまい、背中を撫でてやりつつも息吹は追及の手を緩めない。
「言ったよね?」
「…言ったが…それがなんだ」
「気まぐれ…とか言わないよね?絶対聴いたもん。もう父様を説得したの?みんなには言ったの?」
「…まだだが…いいからもう寝ろ。俺も眠りたい」
「じゃあ一緒に寝よ」
「…はあ?お、お前…意味がわかって言ってるのか?」
「え?何が?」
…きょとん顔の息吹の顔に、別に深い意味はないのだとわかった主さまはしっしと手を払って自分の床に寝転がったのだが…もそりと布団が動いたのでまさかと思って肩越しに振り返ってみると――
「…何をしている」
「一緒に寝るの。駄目?」
何も考えていない行動に重たい息をついた主さまは、仕方なく身体の向きを変えて息吹と真向かいになると、頬杖を突いて露出している肌を見分した。
「…どこも傷ついていないか?」
「うん。まだちょっと身体が痛いけど…大丈夫。主さま…」
――ねだるように唇を半開きにしてみせた息吹の精一杯の誘惑に主さまが抗えるはずもなく、親指で可憐な唇に触れて…顔を近付けた。
「…食われたいのか」
「うん…食べてもいいよ。私…主さまの食べ物だから齧っても大丈夫。私…人じゃないからきっとすぐ元通りになるでしょ?」
「…齧ったりしない。あまり俺を猛らせるな。怖い思いをするぞ」
「しないよ。主さまを怖いと思ったことなんてないもん」
ゆっくりと唇が重なった。
優しかったものがすぐ激しくなり、一瞬の夢のような時間が流れた。