主さまの気まぐれ-百鬼夜行の王-【完】
『主しゃまー、遊んでっ』
息吹が幼い頃ちゃんと発音ができずに“主しゃま”と呼ばれていた。
いつも一緒に寝てやって、いつも一緒に食事を摂って、百鬼夜行以外の時間は全て息吹と一緒に過ごした。
『主しゃま、しーしー行きたい』
「…1人で行け」
『やだ。外で待っててくれなきゃ、やっ』
「…俺は眠たい」
『主しゃまお願い。主しゃまあ』
半べそをかいて小さな小さな手て胸を叩いてくる息吹をぎゅっと抱きしめながらも、殊更息吹の我が儘に弱い主さまはまた息吹を抱きしめて寝ぼけた声で諭した。
「わかった…わかったから泣くな」
「ぬ、主さま?痛いよ…」
「そろそろ…厠位1人で行けるようになれ…」
「主さま?寝ぼけてるの?痛いってばっ」
「…?」
薄目を開けて見下ろすと…何故か息吹を腕の中に抱き込んでいて、息吹が頬を赤くして見上げていて…驚いた主さまは素早く上体を起こして息吹から遠ざかった。
「な…、俺は…夢を見ていたのか」
「なんか寝言を言ってたよ。どんな夢を見てたの?」
恐らく真っ赤になっているであろう自身の顔を袖で隠しながらため息をついた主さまは、空いている手でがりがりと髪をかき上げて息吹が幼かった頃の夢を見ていたことを明かした。
「お前が餓鬼の頃、毎日厠に付き合わされた夢を見ていた」
「だって怖かったんだもん。でも今は子供じゃないし1人で行けるもん」
ぷうっと頬を膨らませた息吹は床から這い出て背中合わせに座ると、暗くなってきた障子の向こう側を見るように瞳を細めた。
「ねえ主さま。主さまのお父さんとお母さんってどんな人?」
「…母は鬼族で最も美しい女で、父は…まあ変わり者だったな。とてつもなく強かったが、俺に跡目を譲った途端“旅に出る”と言って居なくなった。百鬼夜行から解放されて心から嬉しそうだった」
「ふうん…。じゃあ主さまも後継ぎが生まれたら嬉しい?」
「…わからない。寂しくなるかもしれないが…ずっとお前の傍に居てやれる」
「主さま…」
言った傍から猛然と恥ずかしくなった主さまの耳が真っ赤になると、息吹は背中から主さまの身体に腕を回して抱き着いて、嬉しさを隠さずに細い背中に頬ずりをした。
「早くお嫁さんになりたいな」
最大の難関が、ひとつ。
息吹が幼い頃ちゃんと発音ができずに“主しゃま”と呼ばれていた。
いつも一緒に寝てやって、いつも一緒に食事を摂って、百鬼夜行以外の時間は全て息吹と一緒に過ごした。
『主しゃま、しーしー行きたい』
「…1人で行け」
『やだ。外で待っててくれなきゃ、やっ』
「…俺は眠たい」
『主しゃまお願い。主しゃまあ』
半べそをかいて小さな小さな手て胸を叩いてくる息吹をぎゅっと抱きしめながらも、殊更息吹の我が儘に弱い主さまはまた息吹を抱きしめて寝ぼけた声で諭した。
「わかった…わかったから泣くな」
「ぬ、主さま?痛いよ…」
「そろそろ…厠位1人で行けるようになれ…」
「主さま?寝ぼけてるの?痛いってばっ」
「…?」
薄目を開けて見下ろすと…何故か息吹を腕の中に抱き込んでいて、息吹が頬を赤くして見上げていて…驚いた主さまは素早く上体を起こして息吹から遠ざかった。
「な…、俺は…夢を見ていたのか」
「なんか寝言を言ってたよ。どんな夢を見てたの?」
恐らく真っ赤になっているであろう自身の顔を袖で隠しながらため息をついた主さまは、空いている手でがりがりと髪をかき上げて息吹が幼かった頃の夢を見ていたことを明かした。
「お前が餓鬼の頃、毎日厠に付き合わされた夢を見ていた」
「だって怖かったんだもん。でも今は子供じゃないし1人で行けるもん」
ぷうっと頬を膨らませた息吹は床から這い出て背中合わせに座ると、暗くなってきた障子の向こう側を見るように瞳を細めた。
「ねえ主さま。主さまのお父さんとお母さんってどんな人?」
「…母は鬼族で最も美しい女で、父は…まあ変わり者だったな。とてつもなく強かったが、俺に跡目を譲った途端“旅に出る”と言って居なくなった。百鬼夜行から解放されて心から嬉しそうだった」
「ふうん…。じゃあ主さまも後継ぎが生まれたら嬉しい?」
「…わからない。寂しくなるかもしれないが…ずっとお前の傍に居てやれる」
「主さま…」
言った傍から猛然と恥ずかしくなった主さまの耳が真っ赤になると、息吹は背中から主さまの身体に腕を回して抱き着いて、嬉しさを隠さずに細い背中に頬ずりをした。
「早くお嫁さんになりたいな」
最大の難関が、ひとつ。