主さまの気まぐれ-百鬼夜行の王-【完】
今度は幽玄町の人々にお披露目をすることになり、晴明の手を離れて主さまと手を繋いだ息吹は名残惜しげに晴明を見上げた。
「父様…」
「後でまた会おう。今日は宴会になるだろうから私も久々に舞でもさそう」
「ほんとっ!?わあ、すっごく楽しみっ」
「先に行っているからね、ゆっくりおいで」
感激に涙を浮かべている山姫の元へと行った晴明が肩を抱こうとすると、その手を払われたのを見て笑い声が漏れた息吹は、あまりこちらを見ようとしない主さまの手をきゅっと握った。
「主さまこっち見て」
「…いや、いい」
「どうして?せっかく綺麗にしてもらったのに。見てっ」
「…後でゆっくり見る」
衆目がある上に照れ屋な主さまの心情がわからないでもない息吹はこうして手を繋いでくれているだけで精一杯な主さまの袖を引っ張って顔を下げさせると、皆の前で主さまの頬に口づけをした。
「おおおぉっ!」
「!な、何をする!やめろ!」
「主さまが私のものなんだっていうのをみんなに見せつけたの。私にはしてくれないの?」
「だ、誰がするか!」
…怒られてしまったが、まあこれも予想通り。
つんつんしていたが、それでも手は離さずに握ってくれていたので、心から怒っているわけではなく恥ずかしさから怒ったふりをしているのだとわかると、息吹はにこにこ顔になって屋敷までを一緒に歩いた。
屋敷の玄関の前に着くと、今日から我が家になる屋敷にぺこりと頭を下げた息吹は、小さな声で屋敷に向けて呟いた。
「今日からよろしくお願いします」
「…早く入れ。今日からここはお前が住む屋敷だ」
「うん」
中からは時々見かける赤い着物姿の幼女の座敷童が出て来ると、主さまと息吹に幸運を授けた。
「いい夫婦になる。私がここに居る限りはずっとずっと夫婦でいられる。ちなみに私はここに住みついてもう1000年になる」
「ありがとう、座敷童さん。今度一緒に遊ぼうね」
手を振って居なくなると、息吹は主さまに手を振って床の下を指した。
「私、雪ちゃんにこの姿を見てもらいたいから行って来るね。主さまも一緒行く?」
「…いや、俺はいい。お前だけで行って来い」
「じゃあ、後で主さまの部屋に行くね」
――雪男がこの腕の中で溶けて以来の再会だった。
「父様…」
「後でまた会おう。今日は宴会になるだろうから私も久々に舞でもさそう」
「ほんとっ!?わあ、すっごく楽しみっ」
「先に行っているからね、ゆっくりおいで」
感激に涙を浮かべている山姫の元へと行った晴明が肩を抱こうとすると、その手を払われたのを見て笑い声が漏れた息吹は、あまりこちらを見ようとしない主さまの手をきゅっと握った。
「主さまこっち見て」
「…いや、いい」
「どうして?せっかく綺麗にしてもらったのに。見てっ」
「…後でゆっくり見る」
衆目がある上に照れ屋な主さまの心情がわからないでもない息吹はこうして手を繋いでくれているだけで精一杯な主さまの袖を引っ張って顔を下げさせると、皆の前で主さまの頬に口づけをした。
「おおおぉっ!」
「!な、何をする!やめろ!」
「主さまが私のものなんだっていうのをみんなに見せつけたの。私にはしてくれないの?」
「だ、誰がするか!」
…怒られてしまったが、まあこれも予想通り。
つんつんしていたが、それでも手は離さずに握ってくれていたので、心から怒っているわけではなく恥ずかしさから怒ったふりをしているのだとわかると、息吹はにこにこ顔になって屋敷までを一緒に歩いた。
屋敷の玄関の前に着くと、今日から我が家になる屋敷にぺこりと頭を下げた息吹は、小さな声で屋敷に向けて呟いた。
「今日からよろしくお願いします」
「…早く入れ。今日からここはお前が住む屋敷だ」
「うん」
中からは時々見かける赤い着物姿の幼女の座敷童が出て来ると、主さまと息吹に幸運を授けた。
「いい夫婦になる。私がここに居る限りはずっとずっと夫婦でいられる。ちなみに私はここに住みついてもう1000年になる」
「ありがとう、座敷童さん。今度一緒に遊ぼうね」
手を振って居なくなると、息吹は主さまに手を振って床の下を指した。
「私、雪ちゃんにこの姿を見てもらいたいから行って来るね。主さまも一緒行く?」
「…いや、俺はいい。お前だけで行って来い」
「じゃあ、後で主さまの部屋に行くね」
――雪男がこの腕の中で溶けて以来の再会だった。