絡む指 強引な誘い 背には壁 Ⅰ 
「何? 話して」
 ベッドが軋んだ。その弾みで、目を開く。
「……」
 自分は何をレイジに話すことがあるだろう……。
「どうして私が何か話したいと思うの?」
 結局、こんな質問をぶつけるなんて、話したいこともないということだろう。
自己分析ができるくらい、今は頭が働いている。
「何も言わないから」
「……なんか、よく気付くね……」
「うん」
「なんでかな……」
「そりゃ、好きだからでしょ?」
 好きだから。
 彼は隣に寝そべり、ゆっくりと髪の毛を撫でる。
「そういえば、あの車は?」
「あぁ、今も乗ってるよ。だって、あれしかないし。結構慣れたよ左ハンドル」
「知らない人にもらったって……」
「知らなくはないけど。友人の恋人……じゃないけど。友人が好きな人。その人が、出会った印にって」
「お金持ちだなぁ」
「うーん、そう。だけど、彼もその友人のことを好きだからそうしたんじゃないかな」
「そうだね」
「うん」
「でもちょっと妬けるかな……」
「なんで?」
「どうせなら、僕が買ってあげたいって意味」
「いいよ、高いし。せっかくだから、しばらくあれ乗る」
「そう?」
「うん……」
「あのさ……」
「うん?」
「あのさあ……」
「何?」
 ようやく気付いて、彼の方を見る。
「……」
 彼は突然体を持ち上げると、あぐらをかいて座った。
「そろそろ真剣に考えてほしいんだけど」
「え……」
 こんな格好ではまずいかなと気をつかってこちらも起き上がる。
「何?」
「俺だけ、見ていてほしい」
「え……」
< 221 / 314 >

この作品をシェア

pagetop