未来に向かって僕たちは【短編】
6.過ぎ行く日々
あの日の放課後、用務員さんに頼んで紙飛行機を取ってもらった俺は、好奇心に勝てず、紙飛行機の折り目を伸ばした。


あのときの藤原の様子は明らかにおかしかったし、純粋にライバルの進路が気になったのだ。


進路希望調査の用紙には、希望するクラスと第三志望までの大学と学部名を書く欄がある。


藤原の用紙には、全ての欄に文字を埋めた後、消しゴムで消した形跡が残っていた。

その形跡から、第一志望の欄に、地元の国立大の名前が書かれていただろうことが予測できた。


俺はそのとき、あんなこと言ってたけど、藤原は大学に行きたいんだろうなって思った。

希望なんだから好きに書けばいいんだ。

とりあえずは。




週明けの月曜日、藤原は折り目だらけの進路希望調査の用紙を田代に提出していた。


その様子を見て俺は安堵したけど、藤原があの紙に書いた内容は知らない。
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