優しい手①~戦国:石田三成~【完】
朝になり、相変わらず三成はすでに居なくなっていて、慌てて身を起こす。


「も、桃姫、おはようございます!」


「あ、幸村さん…おはよ!もしかして私、寝坊しちゃってた?!」


「いえ、ですが…その…お召し物が…」


言いにくそうに口をもごもごさせて、ちらちら足元を見る幸村の視線に気が付き、視線を下ろすと…

太股がむき出しになっていて、しまいには下着までちらりと見えてしまっていた。


「わっ!ご、ごめんね、私ったら…」


「い、いえ、拙者もその…申し訳ありません!」


土下座な勢いで深々と頭を下げる幸村に、政宗と謙信が忍び笑いを漏らした。


「私はそのままの方が良かったんだけどなあ」


「何をぬかす!桃姫の太股は俺だけのものぞ。誰の目にも触れてはならぬ!」


――窓辺に座って笑んでいる謙信の美貌はやわらかく、昨晩真剣な瞳で欲してきた時の謙信とはまるで別人だ。


「わ、私、顔洗ってくるから!」


「拙者もお供いたします!」


手を取られて立ち上がり、一緒に階段を下りると、清野の部屋の前には三成が目を閉じて座っていた。


「三成さん?何してるの?」


「清野と出会ってから悪いことばかり起きている。この女子の問責をするため、起きてくるのを待っているのだ」


――三成と幸村が、桃にわからないように目配せをし合い、立ち止まって顔を曇らせる桃の手を引いて井戸まで幸村が導く。


「あの女子の言葉を鵜呑みにしてはいけません。姫を惑わせるためならあの手この手を使ってくるつもりです」


「本当にそうかな…。時計って言ってたし…もしかして、それのことなんじゃ…」


想像に踊らされて不安の膨らむ桃の背中を撫でてやり、顔を洗って気分を入れ替えた桃が軽く両頬を叩いてクロの元へと行くと、


匂いで桃が近付いてきたと察知したクロががばっと起き上がって嘶いた。


「クロちゃん、今日も沢山走ってもらうよ!バテたら置いてっちゃうんだからね!」


「ぶひんっ!!」


飼い葉を与え、鬣を櫛で梳いてやると、幸村と2人で部屋に戻ると、そこにはもうすでに清野が連れられて来ていた。


…ごくりと喉が鳴った。
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