優しい手①~戦国:石田三成~【完】
三成から手を引かれて大浴場まで向かい、動揺を隠せない桃はつい三成の気持ちを問い質した。


「ねえ、三成さんは…謙信さんのこと、どう思う?」


「…どう、とは?」


衣擦れの音がして、すぐ傍に立っているのはわかったが…


三成の手が、セーラー服のスカートのファスナーを下げた。


「み、三成さん!?」


「早く湯に浸かれるよう手伝ってやる」


――蝋燭の灯りだけとはいえ、それでも裸を見られてしまうことに変わりはない。


「や、やだ…」


「明日越後へ入れば…恐らく俺とはしばらく会うことは適わぬだろう」


天然の要塞、春日山城。

難攻不落の城としても有名であり、恐ろしく腕の立つ家臣団は豊臣秀吉の重臣である自分を軟禁するだろう。


「え、会えなくなるの…?やだよ三成さん…」


「だが城下町へ出る時は俺も共に行く。目的はそなたの親御を捜すことだからな」


ぱさ、とスカートが落ちたのが分かった。


思えば三成からは下着姿を見られること以上に恥ずかしいことをされたこともあって、しかも“会えなくなる”と言われ、桃の肝が据わる。


「…あ、あんまり、見ないでね」


バッグの中から何とか手探りでバスタオルを探し当て、勢いよくセーラー服を脱いだ。


「…桃」


「は、恥ずかしくなんかないもん。でもお願い、一瞬でいいから後ろ向いてて」


「わかった」


返事と同時にものすごい速さで下着を脱ぎ、バッグに突っ込むとバスタオルを手早く身体に巻きつける。


「お、終わりました」


「早く入って来い、俺はここに居る」


「え、やだ怖いよ!ここ、露天風呂じゃないし蝋燭だけなんて頼りないよ!ね、一緒入ろ?」


――精一杯…精一杯、誘惑してみる。


三成の返事はなく、今頃ものすごく戸惑っているんだろうなあ、と思いながら、壁伝いに浴槽までたどり着き、中へと入った。


「わー、気持ちい…」


「俺も入っていいのか?」


いきなりすぐ傍で声が聞こえて身を竦めると、小さく消え入りそうな声で、頷いた。


「ん、いいよ…。一緒入ろ」


――離れたく、ないから。
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