優しい手①~戦国:石田三成~【完】
「三成さん、さっきの質問に答えてほしいの。謙信さんのこと…」


「いよいよ本気で迫って来るぞ。もう手遅れだ、俺には止められぬ。…そなたが本気で嫌と俺に訴えなければ、俺には何もできぬ」


――一見冷たく突き放されたように聞こえるが、実際は違う。


三成は意固地で真面目で、考えは曲げない。

“おかしい”と思ったことには絶対手を貸さないし、今もその信念が働いて、謙信と対等にやり合おうとしているのだろう。


「ふふっ」


「なんだ、何がおかしい?」


「今の時代って偉い人は奥さんが何人居てもいいんでしょ?もし逆だったら、三成さんも謙信さんも旦那さんにしたのになあ、って思ったらおかしくって」


――三成の手が、肩に触れてきた。


ドキッとして動けずにいると、そんな桃の期待に応えるかのように…肩に、唇が押し付けられる感触がした。


「俺は一人でいい。一人しか居らぬ」


する、とバスタオルが奪われてしまい、慌てて手で胸を庇った。


「や、三成さ…っ」


「今全て見ておきたい。そなたが謙信から心も身体も奪われてしまう前に…」


――見られているのが、わかる。

だが、見られているだけだ。


肩に触れていた手は離れて、目の見えない桃は今三成がどんな表情で自分を見ているのか、まったくわからない。


「や、駄目、見ないで…!私、謙信さんとエッチなんかしないから…!」


「では誰となら契れるのだ?…俺か?俺というならば…今すぐにでも、ここで…」


「好きだよ、三成さんのことが一番好き!でも待って、私、お父さんとお母さんに会いたい!その後だったら…私、三成さんと…」


湯が押し寄せてくる気配がして、いきなり深くキスをされた。

泣きそうになりながら三成にしがみついた。


「好きなの、本当だよ…!私を待っててくれる?ずっと好きでいてくれる…?」


「そなただけが居ればいい。桃、春日山城で会えぬ日々が続いても、そなただけを想っている。文も書く。桃…」


「うん、うん…」


「愛している…」


――せつない“アイラブユー”が聞こえた。


「私も、愛してるよ…三成さん…!」


伝わる。
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