優しい手①~戦国:石田三成~【完】
「宿を出れば越後はもう目の前。姫にはこのお召し物を」
――食事が終わり、一息ついたところで兼続が恭しく差し出したのは…
純白に金糸の鶴の刺繍をあしらったいかにも高そうな打掛で、目が見えない桃はそれが何なのかわからなかったが、触ろうとして手を引っ込めた。
「姫のなんだから触ってごらん。越後入りにはぜひこれを着てほしいんだ」
「え!?民って…どういうこと?」
「城下町を通るので民にはばれてしまいます。殿はこのように見目麗しゅうございますので!それに姫には輿をご用意いたしました。あー、そこの奥州の雛とお乗り下さいませ」
「待て、聞き捨てならんぞ!誰が奥州の雛だと?何故俺が女子の乗り物などに乗らねばならんのだ!」
一触即発の事態に冷や汗を流しているのは部屋の隅に座っている幸村だけで、
景勝は元々政宗のことが見えていないような態度だったし、三成はその打掛を見ただけでいかに越後が潤った国であるかを看破し、探っていた。
「その眼帯を外せば馬でも結構。我らに見られても良いのですかな?」
にたりと笑った兼続に、本来敵である小十郎が思わず小さく笑ってしまって政宗に睨まれたので、咳払いしつつも追従する。
「殿の右目は正室の方と拙者以外は誰にもお見せできませぬ。殿、いっときの我慢です。この小十郎に免じて何卒ご容赦を」
幼少の頃より共に育った年上の小十郎から深々と頭を下げられてしまったらそれ以上食い下がれず、何とかその案を飲み込む。
「まあ、着飾った姫と共に輿に乗るのであれば何とか我慢しよう。俺を城に招き入れて良いのか?暴れるかもわからぬぞ」
20代前半という血気盛んな政宗が挑発したが、謙信は景勝から酒を注いでもらいながらけろっとしていた。
「まあ天下を獲りたければ長生きを勧めるけど、私の刀に錆になりたければ、いつでも寝首をかきに来てもいいよ」
「奥州の小さき龍が暴れたとて、我らは痛くも痒くもないですからなあ。ほれ景勝様、景勝様も何かひとつご口上を!」
寡黙すぎる男は何度も桃をチラ見しながら黙り込む。
「おや、景勝…姫は私の正室だよ?そんな目で見ては困るなあ」
「い、いえ、俺は…」
また敵が増えた。
――食事が終わり、一息ついたところで兼続が恭しく差し出したのは…
純白に金糸の鶴の刺繍をあしらったいかにも高そうな打掛で、目が見えない桃はそれが何なのかわからなかったが、触ろうとして手を引っ込めた。
「姫のなんだから触ってごらん。越後入りにはぜひこれを着てほしいんだ」
「え!?民って…どういうこと?」
「城下町を通るので民にはばれてしまいます。殿はこのように見目麗しゅうございますので!それに姫には輿をご用意いたしました。あー、そこの奥州の雛とお乗り下さいませ」
「待て、聞き捨てならんぞ!誰が奥州の雛だと?何故俺が女子の乗り物などに乗らねばならんのだ!」
一触即発の事態に冷や汗を流しているのは部屋の隅に座っている幸村だけで、
景勝は元々政宗のことが見えていないような態度だったし、三成はその打掛を見ただけでいかに越後が潤った国であるかを看破し、探っていた。
「その眼帯を外せば馬でも結構。我らに見られても良いのですかな?」
にたりと笑った兼続に、本来敵である小十郎が思わず小さく笑ってしまって政宗に睨まれたので、咳払いしつつも追従する。
「殿の右目は正室の方と拙者以外は誰にもお見せできませぬ。殿、いっときの我慢です。この小十郎に免じて何卒ご容赦を」
幼少の頃より共に育った年上の小十郎から深々と頭を下げられてしまったらそれ以上食い下がれず、何とかその案を飲み込む。
「まあ、着飾った姫と共に輿に乗るのであれば何とか我慢しよう。俺を城に招き入れて良いのか?暴れるかもわからぬぞ」
20代前半という血気盛んな政宗が挑発したが、謙信は景勝から酒を注いでもらいながらけろっとしていた。
「まあ天下を獲りたければ長生きを勧めるけど、私の刀に錆になりたければ、いつでも寝首をかきに来てもいいよ」
「奥州の小さき龍が暴れたとて、我らは痛くも痒くもないですからなあ。ほれ景勝様、景勝様も何かひとつご口上を!」
寡黙すぎる男は何度も桃をチラ見しながら黙り込む。
「おや、景勝…姫は私の正室だよ?そんな目で見ては困るなあ」
「い、いえ、俺は…」
また敵が増えた。