優しい手①~戦国:石田三成~【完】
「景勝さんってどんな顔してるの?」


寝る間際、乳香の香りのする方へと手探りで手を伸ばすと、その小さな手を握って頬に持って行った男が居た。


「私の顔はこんな顔だよ。わかる?」


「わ、わ、すべすべ…」


「景勝の顔も同じようなものだよ。ほら、姫に触らせてあげて」


――ちらりとこちらに目線をよこしてきたので、わざと見ていないふりを三成がすると、自分以上に堅物な景勝がやや頬を赤らめながら無言で立ち上がり、部屋を出て行く。


謙信は部屋から景勝が出て行くまで見送って、肩で息をついた。


「あの様子だと子を見せてくれるのは当分先かなあ。あ、その前に姫と私の子が出来るかもしれないね」


「この俗物めが!俺もかなりの女子と夜を共にしたが貴公には適わぬようだ」


――それまでどこか他人事のように黙って話を聞いていた桃は政宗が居る方向に向き直ると、額に人差し指をめり込ませながら唸り、そして答えを導き出した。


「政宗さんには愛姫さんが居るでしょ?」


「な、なに…!」


その変化があまりにも劇的だったので思わず三成も身を乗り出し、小十郎が右往左往しながら政宗のフォローに出た。


「桃姫様、何故愛姫様のことをご存じで…」


「内助の功、愛姫さん!政宗さんに最後まで添い遂げて支えてくれた奥さんだよ。ね、可愛いんでしょ?ねえねえ」


しつこく聞いてはさらに顔色が赤黒く変わり、謙信がにやにや笑うのを見て刀を突きつけた。


「愛姫はただの幼馴染だ!な、内助の功だと!?ということは、愛が俺の正室になるのか!?」


「あ…またやっちゃった…」


顔を両手で覆った桃の態度でそれが図星だと知ると、さらに謙信が杯を呷りながら窓際に寄り、外を歩く景勝に手を振った。


「愛姫は字の如く愛くるしい女子と評判の姫。君みたいな伊達男に振り回されて悲しい思いをさせるのは可哀そうだなあ」


「貴公に愛の何がわかる!知ったような口を利くな!」


――景勝のように荒々しく部屋を出て行く。


とてもまずいことを言ってしまった自覚のある桃が立ち上がり、壁伝いに政宗を追いかけた。


「好きなんだね、愛姫さんのこと」


不器用な愛。
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