優しい手①~戦国:石田三成~【完】
女子と同室で寝たことがない景勝は、


桃の寝息だけで…朝まで眠れなかった。


しかも意外と寝相が悪く、布団を蹴飛ばし、浴衣も乱れに乱れ…

こちら側に寝返りを打った時などはそれはもう…ダイレクトに胸の谷間を見てしまい、声を上げそうになったものだ。


――その度に三成が起きては布団をかけ直してやったり浴衣を直してやったりで、

一体この2人はどんな関係なのだ、と疑いつつも謙信から身の上話を聞かされるまでは耐えなければ、と思いつつも、暗闇の中桃の寝顔を見つめ続けた。


――朝になって、意外と早起きの桃がむくりと起き上がり、三成の布団をまさぐっているのを見て、緊張しつつも声をかけた。


「石田三成は先ほど外へ…」


「あ、景勝さんおはようございます!…あれ?もしかしてもうみんな起きてる?」


脚を崩して座っている桃の浴衣からは太股が覗いていて、“女子は清楚であれ”がモットーの景勝は布団を掴んで桃の膝に被せると冷や汗をぬぐった。


「ふふ、気苦労が絶えないね、景勝」


「!父上…」


まだ寝転がったまま頬杖を突いてそうからかってきた謙信が、柔和な美貌をおどけてみせながら欠伸をする。


「私が女子を連れ帰るとなると、それはもうみんながあれこれ言うんだろうけれど、いつもの通り私は私が決めたことを遂行するからね。景勝もそのつもりで」


「はい」


色部や安田、柿崎といった重臣は恐らく黙ってはいない。

謙信を糾弾し、どこの馬の骨かもわからない桃を追い出そうとするだろう。

…この可憐な女子を?


「怖いな…謙信さん、私どうしてたらいいの?じっとしてた方がいい?」


活発な印象のある桃が俯いて不安そうにすると、謙信が起き上がって膝の上で握った小さな拳を片手で包み込んだ。


「姫は何もしなくていいよ。必ず親御を見つけてあげるからね。そして……」


「?」


――謙信が続けて言おうとした言葉、景勝にはわかっていたが、きょとんとした桃の顔を見て吹き出すと、両頬を軽く引っ張った。


「まあいっか、姫、朝餉を摂ったら着替えてもらうよ。いつものように明るい姫でいてね」


「うん」


謙信はいつになく笑んでいた。
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