優しい手①~戦国:石田三成~【完】
桃は隣に居る政宗の袖を引っ張るとアドバイスを求めた。


「ど、どどどうすればいいのっ?でも私、目が…」


「あの男、こうなることを見越してわざと城下町を通ったな」


「え?言ってる意味がわかんない…」


「そなたが外に出ねば民は納得しまい。行って来い」


――結局無下にされてまごついていると、御簾がするすると開けられて、謙信の手が桃の肩に乗った。


「私が抱いてあげるから心配しないで」


「で、でも…みんな見てるんでしょ!?」


「うん、でもそんなに多くはないよ。じゃあ抱えるよ、私の肩に手を置いて」


――謙信が輿の中に身を乗り出した後、人々は固唾をのんで見守っていた。


三成も例外ではなく、桃がこのような扱いを受けてしまえば、なおいっそう正室として迎え入れられたような手前になってしまい、

それも謙信の作戦のうちだと気付いて、クロと一緒に暴れ出してやりたい気持ちにさらされる。


「おお、なんと可憐な…」


「これはお可愛らしい!さすがは謙信公がお選びになった姫君!」


謙信が輿から抱きかかえて皆に披露した桃は豪奢だが、桃の白い肌によく映える打掛を纏い、そして…


両目は布で覆われていた。


ざわざわとどよめきが起こり、盲目の姫であることが知れると、不安に変わる。


「みんな姫を見てるよ。だって可愛いもんね、目が見える姫はもっと可愛いんだけどね」


「謙信さん、私重たいでしょ?もう輿に戻りますっ」


「駄目だよ抱っこしてたいもん。ほらみんな、私の姫は可愛いでしょ?どう思う?」


回りにひれ伏し、傅いていた民たちは謙信に気さくに話しかけられて舞い上がり、また一斉に頭を下げた。


その時…


「あ…、お団子の匂いがする!」


食道楽万歳の桃の嗅覚が、ちょうど謙信の近くに居た男が持っていた団子の匂いに気が付いて声を上げると、


「こ、こんなものでよろしければ…!」


「あ、ほんとにお団子なの?わあい、謙信さん、食べてもいい?」


「ふふふ、食べてもいいよ。じゃあ私が食べさせてあげようか。あーん」


「あーん!」


幸せいっぱいの桃の顔に、皆が笑顔になった。
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