優しい手①~戦国:石田三成~【完】
「目は痛みますか?」


「最初は痛かったけど今は痛くないです。えと…私、また見えるようになりますか?」


不安で声が揺れる桃の瞼を押したり、少し瞼を持ち上げて瞳を診たりした後、薬師は謙信に向き直って太鼓判を押した。


「光に反応しますし、直に見えるようになるでしょう。滋養の良い色のついた食べ物を摂れば数日中には見えるようになります」


「わっ、本当に!?よかった、ありがとうございます!」


薬師が再び桃の両目を布で覆うと、面々は少しがっかりしながらも盲目にはならないことを素直に喜び、笑顔を浮かべた。


「桃姫、良うございました!拙者、胸がいっぱいで…!」


「幸村さんごめんね、色々迷惑かけちゃったよね。早く幸村さんの顔見たいなー!」


そう桃に言われて真っ赤になってしまった幸村が桃に懸想しているのはばればれで、純情一直線の戦馬鹿にようやく春が来たのも束の間…

その相手が上杉謙信の正室になろうかという女子であることが哀れで、景勝と景虎は密かにため息をついた。


「で、長秀やどこに居るかわからない慶次たちに話をする前に、君たちに話しておこうかな」


謙信の養子2人はそろって背を正すと謙信に向き直り、

三成たちは少し下がって、謙信が私情を挟まずに正確に事実を詳細に伝えているのを見守っていた。

…正確すぎて逆にうすら寒く、2人の顔色がみるみる変わっていくのがわかった。

桃が膝の上で強く握り込んだ拳を謙信が大きな手を重ねて包み込みながら笑った姿を見て、この養父が本気で桃を正室に迎え入れようとしているのがわかり、動揺を隠せずにいた。


「…というわけで、一応越後には桃姫の親御を捜しに来た、ということだから」


「ですが父上…桃姫の親御が見つかればこの越後に…いえ、この時代にもう用はないのでは」


切り込んだ景虎の言葉に三成たちはまた不安を誘われたが、謙信は頷いた。


「そうだね、そういうことになるけど、私は私の愛を姫に一心に傾けるつもりだから、残ってくれる可能性も否めない。そうだよね、姫」


「え…そんな…私は…」


言いかけて、後ろに控えている三成たちを振り返る。


「私は…」


先を紡ぐことができなかった。
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