優しい手①~戦国:石田三成~【完】
完全に熟睡してしまったのを見計らい、景虎は身体に絡まった桃の腕を解いた。

そして一息ついてさあ眠ろう、と思った時…


「ん……」


「!!」


布団が蹴られ、寝返りをこちら側に打ってきて、景虎は何もかもを目撃してしまった。


太股まで捲れ上がった浴衣と、完全に見えてしまっている胸――


血流が体中を巡り、父の…謙信の正妻になるかもしれないという女子には絶対に手を出せない。


「…地獄だ…」


そう呟き、それでもその光景から目を離せずに、恐る恐る桃の頬に手を伸ばすとやわらかい弾力が手に伝わってくる。

あちこち触りたくて仕方がなかったが、何とか耐えて、結局朝まで眠ることができず――


朝日が射してきた瞬間、景虎は身を起こすと桃の肩を揺すった。


「桃姫、朝です。早朝発たねば行軍に追いつけません。姫…」


「ん、まだ眠たいよ…三成さん……」


「…!」


――もう男女の仲になってしまっているのだろうか?

父は…それを知っていてなおこの女子を求めるのか?


「桃……姫。朝です。置いて行きますよ」


耳元で囁くと、それは劇的に効果を発揮して桃が飛び起きた。


「え、朝!?やだ、寝過ごしちゃった!?景虎さんおはようございます!行こ、今すぐ行こ!」


「は、はい。その前にお召し物を…」


――あれを着て行こう。

桃はそう決めていて、部屋の隅に置いてあるはずのバッグを指さした。


「あの中に私の服が入ってるの。持って来てもらっていい?」


「どうぞ」


桃が取り出したのはセーラー服。

景虎が居るのはわかっていたが、一応声をかけて浴衣に手をかける。


「景虎さん、ちょっとだけ後ろ向いててもらってもいい?」


「え?はい」


言われるがままに背を向けると、何かごそごそと音がして、つい振り向いてしまった景虎の眼前には…


浴衣を脱いで、ショーツ一枚の姿になった桃が、ブラをつけようと苦戦している後ろ姿が飛び込んできた。


「………綺麗、だ…」


「え?今何か言った?」


「い、いえ、何も!」


桃姫は父上の正妻!

…そう言い聞かせた。
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