優しい手①~戦国:石田三成~【完】
幸村の慟哭は止まず――
その叫び声を聞いただけで胸がかきむしられる思いになり、逝った信玄を抱きしめたまま声を上げ続けている幸村の腕を揺すった。
「幸村さん、幸村さん…っ!」
「姫…お館様が…お館様が!!」
「幸村さん、泣かないで…!」
――幸村が顔を上げる。
歯を食いしばり、涙に濡れた黒瞳は悲しみに満ちていて、桃の泣き顔を見ると余計に込み上げてくるものがあって…
謙信たちが見つめる中、幸村は桃を強く抱きしめた。
「ゆき、むらさ…」
「お願いです、しばらく、このままで居させてください…!」
謙信は2人が抱き合って悲しむのを黙って見ていたが、倒れ伏し、信玄の遺骸が衆目にさらされていることが我慢ならず、
武田の家紋が入った旗指物を借りると柄から刀で切り取り…
それで信玄の身体を包んで腕に抱き上げて、同じく雄々しい叫び声を上げて悲しむ高坂に差し出した。
「以上で我々上杉と武田の戦は終わった。以後は骨身を惜しみ、甲斐を守りなさい。上杉は以降関知しない。もう戦いたくないね」
「…かたじけない!謙信公、誠に、かたじけない!」
――高坂が信玄の遺骸を受け取る前に、懐に手を伸ばした。
即座に景勝と兼続が刀を向けようとしたがそれを謙信が手で制し、皆が見守る中、高坂は一通の手紙を謙信に差し出した。
「病床でお館様が謙信公に書き残したものです。我々は見ることを許されなかった。どうかこれを」
「…ありがとう」
信玄の安らかな死に顔を見た高坂はまた涙に濡れながら引き返していく。
謙信はその場で、その手紙を見て…微笑んだ。
「…謙信、さん?」
「虎は、やっぱり最期まで虎だなあ」
ようやく幸村から解放され、三成から手を引かれて立ち上がると謙信はしばらく空を見つめて、静かに幸村に命を下した。
「私の代わりに甲斐へ信玄の弔いに行ってほしい。…帰ってこなくてもいいよ、君の好きにするといい」
「殿…!」
「君の働きには本当に感謝しているんだ。だから、甲斐に留まるつもりなら君とは戦いたくない。さあ、行って」
温情を下し、幸村の息を呑ませた。
その叫び声を聞いただけで胸がかきむしられる思いになり、逝った信玄を抱きしめたまま声を上げ続けている幸村の腕を揺すった。
「幸村さん、幸村さん…っ!」
「姫…お館様が…お館様が!!」
「幸村さん、泣かないで…!」
――幸村が顔を上げる。
歯を食いしばり、涙に濡れた黒瞳は悲しみに満ちていて、桃の泣き顔を見ると余計に込み上げてくるものがあって…
謙信たちが見つめる中、幸村は桃を強く抱きしめた。
「ゆき、むらさ…」
「お願いです、しばらく、このままで居させてください…!」
謙信は2人が抱き合って悲しむのを黙って見ていたが、倒れ伏し、信玄の遺骸が衆目にさらされていることが我慢ならず、
武田の家紋が入った旗指物を借りると柄から刀で切り取り…
それで信玄の身体を包んで腕に抱き上げて、同じく雄々しい叫び声を上げて悲しむ高坂に差し出した。
「以上で我々上杉と武田の戦は終わった。以後は骨身を惜しみ、甲斐を守りなさい。上杉は以降関知しない。もう戦いたくないね」
「…かたじけない!謙信公、誠に、かたじけない!」
――高坂が信玄の遺骸を受け取る前に、懐に手を伸ばした。
即座に景勝と兼続が刀を向けようとしたがそれを謙信が手で制し、皆が見守る中、高坂は一通の手紙を謙信に差し出した。
「病床でお館様が謙信公に書き残したものです。我々は見ることを許されなかった。どうかこれを」
「…ありがとう」
信玄の安らかな死に顔を見た高坂はまた涙に濡れながら引き返していく。
謙信はその場で、その手紙を見て…微笑んだ。
「…謙信、さん?」
「虎は、やっぱり最期まで虎だなあ」
ようやく幸村から解放され、三成から手を引かれて立ち上がると謙信はしばらく空を見つめて、静かに幸村に命を下した。
「私の代わりに甲斐へ信玄の弔いに行ってほしい。…帰ってこなくてもいいよ、君の好きにするといい」
「殿…!」
「君の働きには本当に感謝しているんだ。だから、甲斐に留まるつもりなら君とは戦いたくない。さあ、行って」
温情を下し、幸村の息を呑ませた。