優しい手①~戦国:石田三成~【完】
越後へと戻る道中、三成は片時も桃を離さなかった。


…だが会話はない。


桃も何を話せばいいのかわからなかったし、三成も口を開いてしまうと桃を問い質しかねないので、いつも以上に無口になってしまう。


「兵たちは先に戻らせるけど、私たちはここで一泊しよう。桃を休ませてあげたいからね」


僧服を脱ぎ、身軽になった謙信が桃を馬から降ろしてやる。

…三成と謙信もまた、会話を交わしていない。

その緊迫した空気を桃も感じていて、それを生み出したのも自分だとわかっていて、空元気だったが大きく伸びをして笑顔を作った。


「あー、疲れちゃった!汗も沢山かいたし、お風呂入りたいなー!」


「先に入って来るといいよ。私たちは部屋に戻ってるからね」


景勝と景虎、兼続、謙信と三成と桃の一行は宿に入り、女将の手を引かれて露天風呂に通された。

もう両目を覆っている布を取ってもいいのについ癖になってしまっていて、そのまま服を脱ぐと湯を軽くかぶって中へと入った。


「気持ちい…。…2人とも…大丈夫かな。三成さん…」


気遣ってくれてはいたが、口の重たい三成。


「謙信、さん…」


いつも通りに見えるが、どこかおかしいと感じる謙信。


――しばらくぼんやりすると雑念を振り払うように首を何度か振って立ち上がり、布に石鹸を泡立てて身体を擦っていると…


「…え?」


その布は誰かに取られ、そして身体を擦ってくれた。


その手の動き、大きさ――知っている。


「え…?女中、さん?」


「…」


こんな所に居るはずがない。


優しい手つきで桃の腰や背中、そして前に回り込んで胸や太股も洗ってくれる。


「あ…、ゃ…っ」


吐息が耳元で聴こえて、背筋が震えた。


「誰、誰!?」


目を覆う布を外すと…



「謙信、さん…!」


「ああ、ばれちゃった。数日会えなかっただけなのに、君に会ってしまったら求めずにはいられなくてね」



背中から抱きしめられて、わなないた。


「じゃあ、お城の女中さん、は…!?」


「それも私。桃…誰のために戦場へ来たの?」


問われた。
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