優しい手①~戦国:石田三成~【完】
謙信が緊張を和らげてくれたおかげで、桃は豪快にご飯をかき込んで幸せそうな笑みを浮かべた。


「これも食え」


隣に座っていた三成が卵焼きを譲ってくれて、代わりにアジの開きを半分三成の皿に乗せた。


「じゃあこれあげる。物々交換ね!」


「ふ、何を言ってるんだか…」


はにかむ三成にきゅんとなり…、


きゅんとなったのは自分だけではないようで…お園の顔は、桜色に染まっていた。


「…」


「お代わり要らないの?じゃあ残りは私がもら…」


「駄目!謙信さん小食なくせに今日は沢山食べるんだねー」


「だって今日は街へ行くから体力つけとかないとね」


――越後の君主自らが一緒に両親を捜してくれる…?


さすがにそれは気が引けて、桃は箸を置くと謙信に向き直った。


「大丈夫です!三成さんと2人で捜しますから!」


「私も一緒に行きたいんだけど…我が儘言ってるかな?」


とても悲しそうな顔をされて、今度は三成の方に身体を向けた。


「三成さん、あの…」


「…いいんじゃないか?ついて来たいなら来ればいい」


その三成の少し棘が含まれた言葉にまた景虎が食ってかかろうとして、謙信に制された。


「よし、じゃあそれで決まり。君、膳を下げていいよ」


「は、はい、畏まりました」


お園がすぐ傍に来て、ちらりと盗み見されたのがわかった。

…本当にとても綺麗な女性で、鼻筋も整っていて…

その横顔につい見とれていると、三成がむにっと頬を引っ張ってきた。


「少し太ったんじゃないか?」


「え!?ほんとに!?やだ、今日からダイエットしなきゃ!」


「?だいえ…?」


慌てふためく桃の手を謙信が引っ張り、膝に乗せて腰をさわさわと触る。


「ちょ、謙信さん!?」


「うーん、別に太ってないよ?私はもうちょっとふっくらしてた方が好きだなあ」


2人から手を引っ張られて弥次郎兵衛のように揺れながら、顔が真っ赤になる。


「殿、桃姫の細い腕がもげてしまいまする」


「ああ、ごめんごめん。じゃあ準備が出来たら行こうか」


とうとう、両親を捜しに――
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