優しい手①~戦国:石田三成~【完】
三成は信じられない思いで桃をきつく抱きしめていた。


――桃が選んだのは…俺だ…!


例えようもなく嬉しくて、喜びのあまり身体が震えてきて、再度桃に確認してみる。


「謙信よりも・・・俺を選んだということだな?それで、いいんだな?」


「…三成さん…三成さんは秀吉さんを裏切っちゃいけない人なの…。関が原の戦いで…」


「そんな話は聞きたくない!桃・・・俺を選んだんだな?そうだな?」


強く聞くと、桃が腕の中で、頷いた。


「行っちゃやだ…。死んでほしくないの。私…戻らなきゃいけないのになんでこんなことに…」


責任を一人で背負って震える桃が無性に愛しくて、三成は軽々と桃を抱き上げると隣の部屋に移動した。

部屋に明かりは燈してなかったので、床が暗闇の中見えて桃が少し緊張したように身体を揺らした。


「…俺を選んだということは、こういうことだぞ。もう“駄目”は聞かぬ。いいのか?」


「・…ん。でも怖いよ…。三成さん、また怖い顔してる…」


――猛る雄の瞳。


ようやく心も身体も手に入れることができるのだ。

猛らないはずが、ない。


「俺も不安だ…。だが桃、必ずそなたを守ってみせる。そなた一人を生涯愛し抜く」


「三成さん…あぁ…っ」


布団の上に下ろされたと思ったら、もう帯は外されていた。


「ちょ、早いよ…!待って、心の準備がっ」


「ならぬ。考える時間を与えればそなたはまた躊躇する。俺はもう自分自身を騙し抜くことができぬ。桃、そなたの全て、今俺が貰い受ける」


浴衣を脱がせ、一糸纏わぬきめ細やかな白い肌に三成の唇が這った。


優しい手なのに…

時にこうして猛って乱暴になる三成も、愛しい。


あっという間に息が上がってきて、大きな声が漏れた。


「ん…っ!」


「桃、我慢するな。俺に聞かせてくれ、もっと…もっとだ」


黒髪が肌をくすぐり、三成の情熱に焦がされて、溶かされてゆく。


三成は片手で上体を支えながら自身の帯を解いた。


「や、やだ…、見えちゃうよ…!」


「俺の全てを見ろ。だからそなたの全ても見せてくれ」


忘れられない夜――
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