優しい手①~戦国:石田三成~【完】
毘沙門堂の中――
毘沙門天の像の前で座禅を組み、瞳を閉じていた謙信がはっと顔を上げた。
「…ああそうか…、そうなんだね」
苦笑が浮かぶ。
そしてごろりと横になると、自身の掌を見つめて、小さく小さく呟く。
「桃…君の幸せが、私の幸せなんだよ」
できれば手に入れたかった小さなお姫様。
…桃が選んだのは、三成の手だ。
どうしてだかわからないけれど、わかってしまった。
――繋がっているのだ。
やはり桃と自分は、魂が繋がっている。
だからといって選ばれたわけではなく、その事実が余計に苦笑を濃くさせる。
「殿…」
「兼続?なに?」
むき出しの岩の天井を見つめながら入り口から言いにくそうにかけてきた声に返事をすると、兼続はそれ以上言葉を紡ぐことができずに口ごもった。
「…今夜は部屋に戻らない方がいい。私と久々に朝まで飲まないかい?」
「!殿…もうお知りになって…」
「…うん。知りたくはなかったけど、毘沙門天が教えてくれた。はじめて戦に負けてしまったよ」
――それでも、負けた気は不思議としていなかった。
毘沙門天がまだ自分に訴えたいことがあるように見えて、深呼吸をすると起き上がり、また座禅を組む。
「2人だけで飲もう、織田の話もしたいし。兼続、私に何か考えることを与えてほしいんだ。今は…桃のことは考えたくなくてね」
「殿……」
はじめて見た謙信の感傷的な姿――
部屋に戻ろうとした時…隣の三成の部屋から、桃の喘ぎ声が聴こえた。
まさか、とは思ったが…
桃が選んだのは、三成の手――
しかも謙信はそれをすでに知っていて、考えることをやめ、戦に没頭しようとしている。
…願ったり叶ったりだが…
いかんせん、謙信の弱っている姿は兼続にとって衝撃的だった。
「殿、いつまでもお付き合いいたします。桃姫も選択を間違えましたな。拙者が女子だったら間違いなく殿を…」
「兼続うるさい。ほらもう出て行って準備をしておいで」
――桃
君が取るべき手は、ひとつだけなのだろうか?
私の手は――?
毘沙門天の像の前で座禅を組み、瞳を閉じていた謙信がはっと顔を上げた。
「…ああそうか…、そうなんだね」
苦笑が浮かぶ。
そしてごろりと横になると、自身の掌を見つめて、小さく小さく呟く。
「桃…君の幸せが、私の幸せなんだよ」
できれば手に入れたかった小さなお姫様。
…桃が選んだのは、三成の手だ。
どうしてだかわからないけれど、わかってしまった。
――繋がっているのだ。
やはり桃と自分は、魂が繋がっている。
だからといって選ばれたわけではなく、その事実が余計に苦笑を濃くさせる。
「殿…」
「兼続?なに?」
むき出しの岩の天井を見つめながら入り口から言いにくそうにかけてきた声に返事をすると、兼続はそれ以上言葉を紡ぐことができずに口ごもった。
「…今夜は部屋に戻らない方がいい。私と久々に朝まで飲まないかい?」
「!殿…もうお知りになって…」
「…うん。知りたくはなかったけど、毘沙門天が教えてくれた。はじめて戦に負けてしまったよ」
――それでも、負けた気は不思議としていなかった。
毘沙門天がまだ自分に訴えたいことがあるように見えて、深呼吸をすると起き上がり、また座禅を組む。
「2人だけで飲もう、織田の話もしたいし。兼続、私に何か考えることを与えてほしいんだ。今は…桃のことは考えたくなくてね」
「殿……」
はじめて見た謙信の感傷的な姿――
部屋に戻ろうとした時…隣の三成の部屋から、桃の喘ぎ声が聴こえた。
まさか、とは思ったが…
桃が選んだのは、三成の手――
しかも謙信はそれをすでに知っていて、考えることをやめ、戦に没頭しようとしている。
…願ったり叶ったりだが…
いかんせん、謙信の弱っている姿は兼続にとって衝撃的だった。
「殿、いつまでもお付き合いいたします。桃姫も選択を間違えましたな。拙者が女子だったら間違いなく殿を…」
「兼続うるさい。ほらもう出て行って準備をしておいで」
――桃
君が取るべき手は、ひとつだけなのだろうか?
私の手は――?