優しい手①~戦国:石田三成~【完】
抱きしめられたま謙信が静かに襖を閉めて、首筋に顔を埋めてきた。


「…」


「…謙信さん…」


いつも飄々としていながら優しくて、いつも包み込んでくれる謙信が黙り込んで…


自分の決断がどれだけこの人を傷つけてしまったのかを思い知り、


三成の手を選んだ今も、こうして謙信に抱きしめられていることが嬉しくて、しゃくりあげながら鼻を啜った。


「ごめんなさい…謙信さん、ごめ…」


「…謝らなくていいよ。私に魅力が足りなかっただけのことだから。…幸せかい?」


――問われたが、答えられなかった。


是でも非でもなく、三成のことはとても好きだけれど、


同じくらい、この男を――…


「……」


「どうして答えないの?…私に未練がある?」


「…っ」


「……君は私を間男にするつもりなのかい?悪い子だ…」


…ゆっくりと首筋を謙信の舌が這う。


三成に愛されたばかりだというのに、すぐに息が上がり、畳に倒れ込んだ。


「や、だ…、私、何を…っ」


「君は何もしていない。しているのは…私だ」


――帯を外されて、徐々に静かな瞳に情熱の炎が燈りはじめた謙信が見たものは…


胸に刻み込まれた三成の唇の痕だった。


「…私は…気が触れそうだよ…」


「見ないで、見ないで…!」


「こんなに沢山…。もうこれ以上君にあげられるものがないのに…私は君を求めてばかりだ。どうしたら私はいつもの自分を取り戻せる?どうすれば…」


ぽとり、と頬に水滴が降ってきた。


驚いて見上げると…覆い被さっている謙信の瞳から涙が零れ落ちて、頬にあたって流れていく。


「ごめんなさい…、謙信さん、私…三成さんに行ってほしくなかったの。三成さんのことも好きだけど、私…謙信さんのこと…」


「…桃…」


身体をひっくり返されたと思ったら、今度は背中に雨のようなキスと吐息の感触がして、悲鳴を上げた。


「や、だ、め…!」


「駄目だ、私は君を諦めることができない。桃…愛している。私が生きている限りずっと…!」


激しい情熱が桃を焦がし、畳の縁を爪で引っ掻いた。
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