優しい手①~戦国:石田三成~【完】
家康が去り、清野が残った。


清野の顔は恋する乙女そのもので、さっきまでとっても嬉しかったのに、途端に桃は複雑な心境に襲われる。


「さて…軍議でもしてこようかな」


「謙信様…私もご一緒に…」


「そうだねえ…織田と徳川側の情報を吐いてもらうけどそれでもよければ」


「はい!」


喜び勇んで立ち上がり、謙信の膝の上でどうすればいいかわからない、というような表情の桃の前でまた膝を折って、深々と頭を下げた。


「桃さん…いえ、桃姫様…これからは誠心誠意お仕えいたします。今までの不祥事、どうぞお許し下さいませ」


「え…あ、はい…。清野さん、元気そうでよかった」


ふわっと清野が微笑んだ。

相変らずの癒される笑みで、なおかつ謙信に寄せる想いは本物。


不安がすぐに顔に出てしまう桃の細い身体を謙信が抱きしめて、耳元で囁いた。


「今宵は私の寝所に。…抱きはしないけど傍に居て欲しい。桃が求めるなら、喜んで夜伽を共にするよ」


「も、もうっ、謙信さん!」


今度は清野が複雑そうな表情になり、そんな清野に少しでも優越感を感じてしまった桃は自身の頭を殴ると膝から離れて三成の隣に座った。


「三成さんも軍議に出るの?」


「俺は軍議などには出ぬ。そなたの傍に居る」


にこ、と微笑みかけてくれて、思わず三成の手を握るとすぐさま顔が赤くなった。


「…人前ではやめてくれ。…恥ずかしい!」


「三成さんったら照れ屋さんー」


「こらこら、私の前でじゃれつかないように。暴れてもいいのかな?」


笑いながら謙信が兼続と清野を伴って出て行き、主を失った大広間から桃と三成も出ると、手を引いて歩きながら秀吉を思う。


…一刻も早く状況を説明して、豊臣軍まで辿り着かなければならない。


「三成さん?怖い顔…」


「すまぬ、考え事をしていた」


三成の部屋に着いて腰を下ろし、続き部屋にまだ敷かれているままの布団が目に入り、顔を赤くした。


「…なんか…照れるね」


「本当に身体は大丈夫なのか?少し焦ったぞ」


「だからあちこち痛いってば」


笑い合う。

束の間――
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