優しい手①~戦国:石田三成~【完】
その時桃は…急に唇を重ねてきた三成の舌にとろけさせられて、瞳を閉じていた。


「桃…抱きたい。いいか?」


「駄目、まだお昼だよ…?それに昨日いっぱい…」


「まだだ。まだ足りぬ…」


がむしゃらに舌を絡めてきて、身体の力が抜けてしまって畳に横たわると、すぐに覆い被さってきた三成の様子につい笑みが漏れた。


「…何がおかしい?」


「だって…なんかいつもと違うんだもん」


「そなたが関わると俺は冷静ではいられぬ。いいか?抱くぞ」


――もう観念して目を閉じた時…


「桃姫、真田幸村、戻りました!」


外から聞こえてきた幸村の声に桃が飛び起きて、三成の額と自分の額を思いきりぶつけてしまい、悶絶した。


「いったあ!」


慌てて乱れたセーラー服を直して襖を開けると、心の底から嬉しそうな表情を浮かべた幸村が座っていた。

川中島の戦い以来だった再会に喜んだ桃が抱き着くと、相変らず純情馬鹿な幸村は背中に腕を回すこともできず、フリーズした。


「も、桃姫…っ」


「幸村さんお帰りなさい!寂しかったんだから!」


超ど天然で直球の言葉にまた一気に顔色が変わった幸村につい三成も笑みが沸き、傍に呼び寄せる。


「武田はどうした?葬儀は済んだのか?」


「はい。下を向いてばかりではいられませんので。三成殿、武田と伊達は上杉と共闘いたします。先程殿に血判状をお渡ししてきました。…戦が始まります」


「…そうか」


桃の表情が固くなり、幸村と三成は膝の上で固く握りしめられた桃の右手と左手を勇気づけるようにそっと握った。


「…ありがと。ごめんなさい、お父さんとお母さんと私のためにこんな…」


「殿はあなた様の為ならば何でもするでしょう。戦嫌いの殿が率先して動いているのです。兼続殿は感動しきりでございました」


「そっか…。うん、そだよね、落ち込んでばっかじゃ駄目だよね!私、じっとしてらんないからお掃除してくるね!」


「拙者もお供いたしまする!」


脱兎の如く部屋を出て行った後、三成は机に向かった。


秀吉にしたためるための手紙を書くために。


筆を手に、達筆な字で書き始めた。
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